使ってみて役に立った、画家達の名言集

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水彩画ネットワーク 退職後水彩画を描き始めた人へ


ようこそ! (2017年10月13日 金曜日更新)

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はじめに

 この文章は、退職後水彩画を始めた不肖の弟子が、実際にやってみて、「これは役に立った。 是非後輩に伝えたい」と思った、画家達の名言を厳選して記録するものである。 

 世の中には沢山の画家がいて、多くのありがたい名言を弟子達に発しているであろう。 しかし、せっかくのその名言も、弟子の器次第で役に立つもの、役に立たないものがあるだろう。
退職後始めたので、基礎が出来ていない。 基礎が出来る頃には人生が終わっている。 そんな人に向けて書くつもりである。
 各節の構成は次のようにした。 文章のタイトルは名言を示している。 続く[]の中は、名言発言された方のお名前を示している。 その後の文章は、名言への僕の解釈である。
なお、この文章は現時点で完成されたものではなく、適宜推敲、改訂される性格のものとする。
 (2012年6月25日一念発起執筆開始)
 (2014年5月28日読者延べ1万人突破)
 (2015年9月14日読者延べ2万人突破)

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ようこそ! (2017年10月13日 金曜日更新)

1. 入門編(絵を習いに行く前に効く名言)


1.1. 先生を選べ[筆者]

 
 <解釈>
 大きく分けて二つのタイプの先生がいる。先生タイプにより、入門後の弟子人生が大きく変わる。 どちらがよいかは一概には言えない。 弟子が自分の絵に何を期待しているかにより、最重要項目として慎重に選ぶべきである。

 タイプ1が良い場合 タイプ2が良い場合 タイプ1の先生につくと、すぐに絵は上手に見える。 というのも、半分先生が描いたようなものだから。 しかし先生から独立すると、とたんに下手になる。 タイプ2の先生につくと、上手になるのに時間はかかるけれど、個性的でしかも先生から独立しても上手なままでいられる。

 では、先生のタイプはどうやれば見分けられるのか。
それは簡単である。 入門候補の絵画教室、絵画クラブや絵画サークルの弟子作品展に出かけることである。 もし、どの絵も上手だけれど同じような作風であれば、タイプ1の先生についている。 弟子により作風が異なれば、タイプ2の先生についている。


(2014/2/9追記) (2012/7/20記) 


1.2. 絵の鑑賞は、対角線の二倍[奈良市四季彩会S会長]

 
 <解釈>
 絵を鑑賞するのには、絵との間隔はどれでもよいと言うわけではない。 間に適当な距離を取ると一番よく見える距離というのがある。 それが絵の対角線の二倍を目安とする距離である。 美術館でよく、絵との間に柵を作っているが、絵を触られないようにと言う以外に、柵に沿って見ると最適な距離で鑑賞できるという配慮でもある。

 近づきすぎるのは厳禁である。 絵はまさに「絵空事」であり、現実の風景を描いているようで、実は観る人を錯覚させて成り立っている。 近づいてしまうと、その錯覚が解けてしまい、画家としては非常に都合が悪い。
 一方離れすぎると、絵が小さく見えてしまい、今度は「絵がよく見えない」という問題が生じる。 やはり近ければ近いほど、絵はくっきりと見える。 実は名画と呼ばれているものは、遠くから見ても鑑賞に堪えるものであるが、それなりのものは、近いほうがよい。(詳しくは4.1.章「良い絵は遠くから光っている。ほかの絵とちがう」参照) それらの折り合いの結果が、対角線の二倍という経験則である。


(2014/2/8追記) (2012/11/20記) 


1.3. 絵画は遠くにありて眺めるもの、写真は近くにおいて見るもの[筆者]

 
 <解釈>
 前節(1.2. 絵画の鑑賞は、対角線の二倍)を別の角度、すなわち写真との対比から説明する。 対象物を正確にかつ素早く描写する力においては、絵画は写真には到底かなわない。 たとえばスナップ写真は誰でもあっという間に、人物を描写できる。 さらに、20cmまで近づけば、各部分の詳細が見えてくる。
 一方絵画はその昔、スナップ写真相当の人物画を、専門の画家に何ヶ月もかかって描かせていた。 その当時でも正確性という観点から言えば、今の写真にはるかに劣る。 昔の人物画に20cmまで近づけば、みられたものではない。 現在も、実物そっくりに描いたと称する絵画が存在するが、それも20cmまで近づけば、写真にかなわないことが分かる。

 ところがスナップ写真にも弱点がある。 遠く離れれば離れるほどぼんやりとしてくる。すなわち、壁に飾って、少し離れて眺めようとすると、とたんに印象が弱くなる。 絵画だとそんなことはない。 ある程度離れたほうが生き生きと見える。 特に名画になると10mぐらい離れていても輝いて眺められる。 もっと正確に知りたい場合は、「4.1.良い絵は遠くから光っている。ほかの絵とちがう」をご覧あれ。


(2014/2/8追記) (2012/12/28記) 


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ようこそ! (2017年10月13日 金曜日更新)

2. 初級編(絵を習い始めた頃に効く名言)


2.1. 赤系の絵の具を買い足そう[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 水彩画を習い始めるとき、まず24色の絵の具セットを買うだろう。 花を描こうとすると24色では足りないので、混ぜて望みのものを作ろうとする。 実際にやってみたら分かることであるが、混ぜると色が汚くなる場合と、それほどでもない場合がある。 難しいのは、赤系と紫系のきれいな色を作る場合である。 なぜ難しいかという理屈は4.5.2 絵の具の特性をご覧あれ。
赤系の花は描く機会が多いのでので、とりあえずは次のものを買い足すのが島田先生のお勧めである。 ここで黄色が例外となっているが、黄色系の花を書く場合、パーマネント イエロー レモンに白を混ぜると色が濁るので、ネイプルス イエローもほしいところである。
 これらをを使って描いた絵を次に紹介する。
 (絵をクリックすると拡大します)
  
図2-1-1 Yさん(F8)
  └→詳しく見る

なお、カドニウム系の絵の具は有毒性なので、長期間手につけておくとかはしないように注意が必要と思う。

追記[東京都錦織先生[参照1]] 
 きれいなピンクを出すには、オペラ がお勧め。
オペラを使って描いた絵を次に紹介する。
 (絵をクリックすると拡大します)
  
椿-6号(F6)
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追記[奈良市島田先生]
 上品な茶色がほしいなら上の他にマースイエローがお勧め。
 油絵なら、さらに他に次のものがお勧め。
(2016/11/23追記) (2016/6/22変更) (2014/8/16追記) (2014/2/8追記) (2013/2/12変更) (2013/2/6追記) (2012/12/29追記) (2012/7/21記) 


2.2. 紫系の絵の具も買い足そう[筆者]

 
 <解釈>
 紫系のきれいな色を出すのは赤系と同じく難しい。 みずみずしい花を描こうとすると、色を混ぜるとどうしても濁ってしまい、試行錯誤の末はたと思いついた。そうだ。 色を混ぜてきれいな紫を作るのは無理なんだ。 なぜ難しいかという理屈は4.5.2 絵の具の特性をご覧あれ。
紫系の花を描く場合は、次のものを買い足すのがお勧めである。
(2014/8/16追記) (2014/2/8追記) (2012/07/21記) 


2.3. カメラはゆがんでいる[佐久市K先生]

 
 <解釈>
 スケッチに出かけると、その場では終わらずに写真を撮影し、家で残りを完成するだろう。 また室内静物の場合も、みんなで集まってやる場合は、やはり写真撮影をして、残りは家で見ながら描くことになるだろう。
 カメラのくせの関係で撮った写真はゆがんでいるので、写真を見ながら描く場合の注意点が二つある。 もっと詳しい説明は、将来上級編で説明するつもりである。
  1. 遠近感が違う。 風景撮影の場合、写真は遠近感が弱くなっていることが多い。 言い換えれば、遠くが大きめに写っている。 室内撮影の場合は逆に写真では手前が大きく写りすぎていることが多い。 言い換えれば遠近感が肉眼より強くなっている。
     ただし、標準レンズ=35mmフィルム換算50mm でかつスケッチした場所から撮影すれば、ほぼ肉眼と同じ遠近感が得られる。 この場合はスケッチ対象物の周りに余分なものが撮影されるが、それはパソコンのトリミングを用いて削ればよい。
     この例として、建物撮影をやってみた。 つぎの図2-3-1-1から3に撮影結果を示す。

    (絵をクリックすると拡大します) 
      
    図2-3-1-1 望遠レンズ 
    ぺったりした感じ
      
    図2-3-1-2 標準レンズ 
    ほぼ人間の遠近感
      
    図2-3-1-3 広角レンズ 
    遠近が強調されすぎ
     
     肉眼では人間の遠近感は真ん中の図2-3-1-2のようになる。 この遠近感でスケッチして家に持ち帰る。 これを自動ズームカメラで遠くを撮ると、左の図2-3-1-1のように、のっぺりした、遠近感が人間より弱い写真になる。 遠近感は、手前の木や白い柱状の縦棒と、遠くの芝生あたりの緑との比で比べると分かりやすいかも知れない。
     一方、スマホあたりで撮ると、右の図2-3-1-3のように撮れるだろう。 これは広角レンズを使ったためであり、広い画面が得られる代わりに、遠近感が強調されすぎる嫌いがある。

  2. 形がゆがんでいる。 風景撮影の場合は鼓(つづみ)型(糸巻き型とも言う)に、室内撮影の場合は樽(たる)型に、撮った写真がゆがんでいることが多い。
     ただし、ある程度高級なカメラ(高級コンデジ以上)を買えば、ゆがみが気にならない程度に自動ゆがみ補正をしてくれることが期待できる。
     鼓(つづみ)型湾曲の例を図2-3-3に、それをカメラで自動ゆがみ補正したものを図2-3-4に示す。 図2-3-3の上下左右の端に注目すると、真ん中が内側にへっこんでいるのがお分かりいただけるだろうか。 よく分からないときは、絵をクリックしてみると、分かりやすいと思う。

    (絵をクリックすると拡大します) 
      
    図2-3-3 鼓(つづみ)形彎曲の例
    (上下左右の端に注目)
      
    図2-3-4 自動ゆがみ補正後
     
     
     カメラの世界では、自動ゆがみ補正、グレーポイント法を用いた自動色調整などを用いると、現実の形と色に近づけることが可能である。 次の絵はそれらを施している。
    (絵をクリックすると拡大します)
      
    図2-3-5 ピクニック・春(F8)
      └→詳しく見る
・関連記事
 ├4.2. 人物画はモデルから離れてスケッチしよう
 ├デジタル一眼レフカメラの基礎知識−遠近感(パースペクティブ)
 ├歪んで見える歪曲収差(ディストーション)
 └写真が膨らんだように写ってしまうワケ(樽型歪曲収差)

(2016/8/7文章推敲) (2016/8/6追記) (2016/8/1追記) (2014/3/26改訂) (2014/2/8追記) (2012/12/7記) 


2.4. 筆は慎重に選ぶべし[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 筆は作家と絵を結ぶ大切な部分。 水彩の場合、筆に水をつけて紙におろしたとき、あげてみて曲がったままのものは落第。 すっとまっすぐに戻るものが良い。
もう一つ。 水彩下塗り工程では水を沢山含ませられるものが良い。
 
 使ってみた感じは、次のようであった。
水彩筆 筆の戻り 水含み 
良い筆
市販の水彩用筆
動物筆
ナイロン筆 ×
習字筆
平筆 ×
悪い筆 ×

 市販の水彩用筆はおおむね「良い筆」であるが、ブランドによってあたりはずれがある。 動物(テンなど)筆は高級筆である。 市販の水彩用筆とそう変わりはないが、あたりはずれがない。 ナイロン筆は大変安価である。 やや腰が強すぎる感があるがあるが、下塗り工程をすぎれば利用できる。 習字筆はやや腰が弱い感があるが、水含みが大変良く下塗り工程では良いかも知れない。
 平筆はプロに愛好家が多いが、下塗り工程では水持ちが悪く、初心者には使いこなせない。 ところが彩色工程に入ると、平筆は図2-4-1の背景上半分のような独特のタッチを表現できる。 これがあるので、プロに好まれるのではないか。

(絵をクリックして拡大すると、平筆独特のタッチが見えるようになります)
  
図2-4-1 秋の野菜たち(F8)
  └→詳しく見る

 つぎに良い筆、悪い筆の例を写真で示す。 左が描いている途中、右が筆を上げたときの状態である。

良い筆 
  
途中
  
引き上げてみたら
 
悪い筆 
  
途中
  
引き上げてみたら
   
・関連記事
 ├2.6. 下塗りは一番薄いところから
 ├2.7. 彩色は白色、黒色を使わない
 ├3.5. パレットよりもヨーグルトの外ぶた
 └3.6. だんだん筆が太くなってゆく

(2016/6/22変更) (2014/4/14追記) (2014/2/8追記) (2013/2/11記) 


2.5. 水彩は下描きが基本[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 下描きは彩色の前に、鉛筆などで形を線描で描く作業である。 水彩の場合は下地は紙の色なので、油絵のように下地作りはやらないことが多い。 ということでいきなり下描き工程に取りかかる。 この工程は大きく分けてトリミングラフ下描き詳細下描きと作業が進む。 油絵はラフに線描してすぐに次の工程に取りかかるが、水彩は先に塗ったものが、のちのちでもみえてしまう。 そこで、詳細まで線描を行い、次の下塗り工程へ移る。 水彩はこの工程で構図が完全に決まってしまうため、この工程をマスターすることが基本となる。

 絵を描く対象として何を選ぶかは個人の好みであるが、仮に次の風景が目にとまり、水彩で描くことにして、下描き作業手順を具体的な例で示そう。 なおこの風景は竹取物語で有名な、その昔竹取の翁が住んでいたとされる竹取公園である。
  
図2-5-1 竹取公園の風景
 
 まずは公園風景中どこの部分を切り取って描くか(トリミング)を決める必要がある。 熟考の末、トリミングしてつぎの部分を絵にすることとした。
  
図2-5-2 トリミング
 
 切り抜いた部分だけを表示すると、次のようになる。
  
図2-5-3 切り抜き後
 
 いよいよラフ下描きにとりかかる。 まずは、とりわけ心引かれるものをにしつつ、大きな物の配置を大まかにB4ぐらいの鉛筆で描いて行く。 大きさと位置のバランスを整えるためであり、この時点では細かく中身を描き込まない。 なれないうちは大きさと位置を掴みにくいので、初めのうちは、はがきとか4号までぐらいの小さな画板を使うと描きやすい。 まず構図を決めるのは、自分の描きたい世界をつくることで、大切である。
  
図2-5-4 ラフ下描き
 
 図2-5-4で一応ラフ下描きが出来たと思って、
画板から少し離れて見ると、水車小屋がゆがんで上が大きく描かれている、また、真ん中の生け垣があると遠近感が得にくいということが感じられた。 生け垣を削除してみると、今度はその後ろが横の線であり、全体として斜めの線が弱い感じがした。 そこで、川岸を斜めに変更してみたら、遠近感が強調された。 水車小屋は藁葺き屋根に変えた。 これで大まかな構図ができあがった。
  
図2-5-5 大まかな構図完成
 
 最後に詳細下描きにとりかかる。 油絵であれば画板の上で、ああでもないこうでもないと試行錯誤で、色を塗りながら構図を決めて行くことが可能である。 が、水彩の場合、先に塗った色がいつまでも表に見えるため、詳細な構図はここで決めてしまうことが基本となる。
 対象物を正確に写し取る必要はないが、風景画では家、室内画では人物は「それらしく見える」ように正確に描写すると良い。 これらは普段人の目に触れる機会が多いため、ちょっとしたことが「不自然」と感じられる。
(絵をクリックすると拡大します)
  
図2-5-6 竹取公園の夢(スケッチ)

これで詳細下描きは完成した。 あとは、
色を塗る作業になる。

 おまけであるが、彩色が終わり完成したものをつぎに見せる。 彩色してみると、空が少し多すぎる気がしたので、山を加えた。 また、水車小屋の左側空間が寂しかったので、母牛と仔牛を加えて、空間を賑やかにしてみた。
(絵をクリックすると拡大します)
  
図2-5-7 竹取公園の夢(彩色後)
  └→詳しく見る


下描き作業のQ/Aを下に列挙する。
・関連記事
 ├2.3. カメラはゆがんでいる
 ├2.6. 下塗りは一番薄いところから
 ├3.2. 絵は離れて描け
 ├3.3. 風景の構図は近景、中景、遠景
 ├3.4. 室内の構図は実物大で
 ├4.1. 良い絵は遠くから光っている。ほかの絵とちがう
 ├4.2. 人物画はモデルから離れてスケッチしよう
 └4.3. 手早く絵を仕上げ、かつ上手く見せるこつがある

(2017/2/1追記) (2016/6/22変更) (2014/2/8追記) (2013/6/16追記) (2013/6/15追記) (2013/4/30改訂) (2013/4/13記) 


2.6. 下塗りは一番薄いところから[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 水彩絵の具は、「下地が、さらにその上に塗った絵の具が、」最後まで透けて見えるため、それを生かした作業手順となる。 すなわち、大まかな配色を絵全体で確かめながら、次第に濃い色、暗い色を上塗りして、完成して行くことになる。 その第一歩が、下描きされた絵の、パーツパーツ(たとえば、葉っぱ、花、ビンぐらいの単位)で、その中で一番明るい色薄い色を、パーツごとにに塗って行く下塗り工程である。

 次の絵を水彩で描くことにして、下塗り作業手順を具体的な例で示そう。 
  
図2-6-1 これから描く対象
 
 ここではビン、花、バナナ、カボチャ、ニンジンぐらいのパーツで、各パーツの中で一番薄い色を大まかに塗っている。 その色が次工程である彩色時は、パーツの中で一番明るい色となる訳である。
 なお前工程である下描きでは、シクラメンの花を強調して2割大きく描き、ビンは構図の安定のためにやや後ろにずらしてある。
  
図2-6-2 下塗り開始
 
 どんどん、大まかに塗って行くと、背景も含め一応全パーツ「一番薄い色で」塗り終わる。
  
図2-6-3 一番薄い色で塗り終わる。
 
 ところが、周りを塗って行くとどうも薄すぎると感じるパーツが出てくる。 上の絵で言うと、ビン、花、バナナ、カボチャが薄すぎるようである。 周りに色がつくと、全体のバランスが崩れてしまうのが原因である。 そこで、もう一度、こんどは絵の具に混ぜる水を少し減らして、同じ色を塗り重ねると、しだいに濃くなって行く。 つぎの絵が完成した下塗りである。
  
図2-6-4 下塗り終了
 
 この工程では細部にこだわるよりも、色を含めた構図のバランスを「全部のパーツに色を塗ることにより」確認するほうが重要である。
 
下塗り作業のQ/Aを下に列挙する。
・関連記事
 ├2.1. 赤系の絵の具を買い足そう
 ├2.2. 紫系の絵の具も買い足そう
 ├2.7. 彩色は白色、黒色を使わない
 ├3.2. 絵は離れて描け
 ├3.5. パレットよりもヨーグルトの外ぶた
 └4.3. 手早く絵を仕上げ、かつ上手く見せるこつがある

(2017/2/10追記) (2014/2/8追記) (2013/2/22記) 


2.7. 彩色は白色、黒色を使わない[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 前節で下塗りされた絵をいよいよ、少なくとも20分できれば二日ほど養生してから彩色する。 水彩絵の具は、「下地が、さらにその上に塗った絵の具が、」最後まで透けて見えるため、それを生かした作業手順となる。 すなわち、大まかな配色を絵全体で確かめながら、次第に濃い色、暗い色を上塗りして、完成して行くことになる。 すでに各パーツ中の一番薄いところは下塗りされているので、濃い部分を上から塗り重ねることになる。

 彩色のときに、注意点が二つある。 
  1. 下地の白をなるべく生かす。 色を薄めるために白い絵の具を加えると、薄くなるならずに色が濁るだけではなく色が浮いてくる。
    そこで、既に下塗りで他の色が塗られている場合は、
    • 白い絵の具を加えて明るくするのではなく、色を水で薄めて(下地の白と合わせることにより)明るいという表現をする。
    • 下塗りが濃すぎたので明るくしたいのであれば、後述Q/Aで述べる方法で色抜きをする。
    • 不透明にもなるが自分の出したい色に必要なら、適度を考えて使えば良い。 たとえば肌のように不透明感を与えたい場合は、必要に応じて白を使う。
    白単独で使う場合は、
    • 局所的に明るいという表現をしたい場合は、下塗りを二日間ほど乾かしてから、水を混ぜずに白を使う。 そうすると下塗りと混じらず透明感を保ったまま、ほぼ白になる。
    • 純白を得たい場合には、下地を塗り残して白の表現をする。 塗り残しはにはアラビアゴムを使うなどの方法がある。
    • 不透明感を与えたい場合は、白を水と混ぜ、下地に塗り重ねる方法もある。
  2. 黒は強いので、基本的に使わない。 黒を使いたい場合は、赤青黄三原色を混ぜて代わりに使うと、上品な感じになる。 わざと汚くする場合と、単独で強烈な印象を与えたい場合は小さい範囲で例外的に使う。

 では前節下塗り工程の続きで彩色作業手順を具体的な例で示そう。
次の絵では、ニンジン、カボチャ、バナナは数回濃い色を、色を変えながら重ねている。 葉っぱは、下塗りから一回塗り重ねた状態である。 彩色工程では絵の具は水を少なく使って濃いめに使う。 それを塗り重ねて行く。 塗るごとに養生して乾かしてからまた塗ると、透明水彩特有のうるしのような深み(すかし効果)が出てくる。
  
図2-7-1 すかし効果を狙う。
 
 養生して乾かすと、違う色を塗り重ねることが出来る。 たとえば少し黄色みがたりないと思えば、原色の黄色を上に塗ることにより、黄色みを増やすことが出来る。 次の絵で四角で囲んだところ(緑、黄、青の四カ所)は、いずれも絵の具の色をそのまま塗り重ねているが、二三日おくとこのように先に塗っておいた色となじんでくる。 葉っぱを塗ることにより、バナナが弱くなってきたので少し濃くしておいた。
  
図2-7-2 原色を塗ってみる。
 
 影をつけ、背景や机を塗り重ねた。 そうすると、ニンジン、バナナ、ビンが弱く思えてきたので、さらに濃くしていった。 花、葉っぱには手を加えていないが、背景を工夫することにより、より生き生きと見せることが出来る。 これで完成した。
  
図2-7-3 背景を工夫し完成
 
 最後にガクブチで飾ることにより、馬子にも衣装、よりよく見せることが出来る。
(絵をクリックすると拡大します)
  
図2-7-4 シクラメン・冬(F8)
  └→詳しく見る

彩色作業のQ/Aを下に列挙する。
(2017/2/15追記) (2016/6/22変更) (2014/8/16追記) (2014/2/8追記) (2013/3/12改訂) (2013/3/10改訂) (2013/3/9改訂) (2013/3/2記) 


2.8. スケッチとは観察すること[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 スケッチすると、先輩方は速いしうまい。 それに比べ自分は何を描いたらよいのやらに始まり、どう描いたら良いのか、初心者は分からなく途方に暮れるのではないだろうか。 何を描いたら(対象物)は、とりあえず先生にお願いすることにして、どう描いたらよいのかについてのポイントをつぎに述べる。
 大事なのは、手早く手を動かし線を引くことではない。 大事なのは対象物をじっくり観察することである。 観察になれてないので、先輩方よりスケッチに時間がかかるのだ。 観察は限られた時間でやるので、観察のポイントがある。
 ここで話の前提として、カメラで撮影をして、スケッチの続き、色塗りは家に持ち帰りやるということにする。 というのも、スケッチの本来の姿はその場の空気感観察なので、全部現場で終えるのが理想である。 が入門編=この節の読者はとても先輩方のまねは出来なくて、家に持ち帰って写真を見ながら宿題をこなすことになるだろうからである。

 まず風景画から述べる。 
  1. 特に大事な点として、人間が見慣れているもの(特に家)については、形のゆがみ、大きさの違いがあると、観る人に違和感が残る。 そうするとへたな絵と見られてしまう。 家については重点的に観察し、描いておく。
  2. 暗い部分が写真ではつぶれてしまうので、その部分の状況を重点的に観察し覚えて持ち帰る。
  3. 意識せず撮影すると、遠近感が写真と人間の目では異なるので、意識して遠近感を人間と同じにして撮影しておくか、物と物との比率を重点的にスケッチで描き留めておく。
  4. その場の雰囲気、季節感が出ている物がないか、朝とか晩とかの時間を表す物はないか、捜してみて、あればそれを重点的にスケッチする。 季節の花、陰の具合、光線の当たり方などがその例である。
  5. 木の葉っぱの色、枝の付き方、木の色は、木の種類によって千差万別である。 2.9. 自然界には絵の具そのままの色はないので、よく観察しよう。
  6. お寺・神社の屋根は、良く観察してみると三次元でカーブを描いている。 これは美しいものであるが、描くのが大変難しい。 よく観察してスケッチしよう。
    (絵をクリックすると拡大します)
      
    図2-8-1 長久寺の秋(F6)
      └→詳しく見る
  7. プロいわく、物の配置は全部覚えて持ち帰る。 それぐらい、プロは対象物を観察している。
 つぎに室内画(除く人物画)について述べる。
室内にある物は人間がある程度見慣れているので、風景画に比べて初心者には少し難しい面がある。 
  1. 室内画では複数の物を画面に収めるが、特に物の前後関係に違いがあると、観る人の違和感となる。 物の前後関係を頭に入れながらスケッチすると良いだろう。
  2. 陰を描き込むと立体感、現実感が出てくるので、陰を重点的に観察する。 できれば一方向から光を当てると描きやすい。
  3. 風景画と同じく、形のゆがみ、大きさも注意したい。 カメラの遠近感も同じ注意が必要。
 最後に人物画について述べる。
人間は特に顔は、少しの違いを認識できるので、室内画、風景画に比べて格段に難しい。 
  1. 人物画では各部品間の形のバランスが少し異なるだけで違和感となるので、ここを十分に観察する。
  2. 加えて上の、室内画の注意点は人物画にも同様に当てはまる。
  3. なお上級編であるが、4.2. 人物画はモデルから離れてスケッチしようも参考になろう。

(2016/6/22変更) (2013/6/5追記) (2013/4/22記) 


2.9. 自然界には絵の具そのままの色はない[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 さてスケッチをしようと出かけ、よくよく観てみると、絵の具と現実の色があまりに違うことに気がつき、愕然とする。 家などの人工物はともかくも、風景の中の葉っぱの色、空の色・・・は、絵の具とあまりに違いすぎる。 葉っぱにいたっては、木や草の種類ごとに、さらに若い新芽、光の当たりぐあい、などなどで、微妙に色合いが異なることに気がついてしまうと、気が狂いそうになる。 絵の具はそのままでは生々しすぎで、自然界はもっと地味なのも気になる。
  
図2-9-1 葉っぱの色は多彩かつ地味
 

 2.9.1 混色の方法

 自然界に近い、あるいは観るものに違和感のない表現をしようと思うと、「複数の絵の具を組み合わせて、表現したいある色を実現」=混色することになる。 混色に利用される方法の内、代表的な物を次に挙げてみよう。
方法 特徴 用途
1: 絵の具をあらかじめ混ぜておいてから、画板に塗る。 広い面積を同じ色で塗るのに向いている。 下塗り工程やたとえば一面真っ青な空など
2: 画板上で、重ね塗りする。 微妙な色調の違いや、深みのある表現が出来る。 彩色工程で方法1:と組み合わせて使用
3: 点描で描く。 すなわち観る人の目で混色させる。 濁りの少ない、きれいな色表現が出来る。 一部の印象派の絵がこの描き方
4: 線描で描く。 すなわち観る人の目で混色させる。 濁りが少なく、かつ力強い表現が出来る。 ゴッホの絵がこの描き方

 2.9.2 風景画の表現

 どの色とどれを混ぜるとこういう色が出るということは、経験を積んで体得していく以外にない。 といってしまえば、入門編=この節の読者からみて身もふたもないので、風景画で重宝する二つの混色について紹介しよう。
目標とする表現 混ぜ方 実施例
(絵をクリックすると拡大します)
湿気の多い日本の空 mineral violet少し、blue gray多く、
horizon blue多く。 
湿気表現は白多く、黒少しで
灰色作り混ぜて加減する。
  
背景が法隆寺の空
奈良の女(ひと)(F10)
  └→詳しく見る

  
水彩用紙の地色を利用して、
薄雲の表現も出来る。
千早赤阪村下赤坂(F8)
  └→詳しく見る
木の葉 緑色をあまり使わないほうがよい。 
青系統の色に黄土から茶系、
暗い場合はこげ茶系などを混ぜると
よほどリアリティーが出てくる。
  
黄土色で下塗りし、青系、茶系を
重ね塗りした。
つつじの鳥見山公園(F8)
  └→詳しく見る

 2.9.3 肌色の表現

 更に、人物を描くには肌色で苦労すると思うが、肌色のうまい表現の仕方を二人の先生方から教えていただいたので、紹介しよう。

 [奈良市島田邦麿先生]曰く、透明水彩で日本人の肌の表現をするには、バーミリオン(だいだい色)とネイプルス イエロー(上品な黄色)を使用すると、上手く表現できる。
 この話を補足する。 水彩画の場合は、基本専用の、やや黄色がかった紙に描くので、バーミリオンを薄く伸ばしたやや桃色と、後ろの紙の黄色が混じり合って、やや健康的な肌色となる。 人によっては黄色がかった肌もあるので、人により加減する。
 さらに補足すると、これだけだと日焼けとか、暗いところの表現が出来ない。 筆者は、バーント アンバー(こげ茶色)とブルー系を加えて使っている。
 そうすると具体的には下の絵のような肌の表現となる。

(絵をクリックすると拡大します)
  
図2-9-2 スイスの、あかりん
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 [武蔵村山市O先生]曰く、すべての肌は次の5色で表現できる。  この話を補足する。 油絵の場合、背景が黄色がかった白とは決まっていないので、不透明なしろが登場する。 バーミリオンの代わりにカドニウムレッド ライト、ネイプルス イエローの代わりにイエローオーカーとなっているのは、水彩紙の黄色を補う役目をしているのではないか。
なお、カドニウム系の絵の具は有毒性なので、長期間手につけておくとかはしないように注意が必要と思う。


 どう混色するかは、自己表現の手段であるから、自分色を自分で捜すことになる。 実際の色を自分色に変えて描く場合もある。 ともあれ混色は経験を重ねてゆっくり体得していけばよいし、そこに表現の面白さがある。
上級者向けには4.5. たかが色、されど色々を用意したので、興味があればそちらもご覧あれ。


(2017/2/25追記) (2017/2/9追記) (2016/11/23追記) (2016/8/18変更) (2016/6/22変更) (2014/8/16追記) (2013/5/19記) 


水彩画ネットワーク 退職後水彩画を描き始めた人へ


ようこそ! (2017年10月13日 金曜日更新)

3. 中級編(3年ぐらいたって、少しなれた頃に効く名言)


3.1. 具象画は構図8割色彩2割、抽象画は構図2割色彩8割[奈良市四季彩会S会長]

 
 <解釈>
 水彩画を習い始めて3年目ごろに、色彩感覚がないな、構図も今一だなと感じていたころに、これを教えていただいた。 初心者はえてして構図も色彩もになりがちであるが、「具象をやるものとしては、まずは構図が大事である」ことを教えていただき、それに注力するようになった。 これにより、迷いがふっきれ、絵も一段階上達したとその当時感じたものである。

 見方を変えればこの名言は、色彩感覚が優れたものは抽象画に進め、とも解釈できるであろう。
また、この名言に感銘を受けた筆者は、構図探しに明け暮れることになった。 常に「めずらしくて気持ちの良い」構図がないか、眺めていると、ときどき、これだ! というものに出会った。 たとえば、つぎのような構図である。

(絵をクリックすると拡大します)
  
図3-1-1 カムチャッカの鐘(F8)
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(2016/6/22変更) (2015/5/2追記) (2014/2/8追記) (2012/7/01記) 


3.2. 絵は離れて描け[佐久市K先生]

 
 <解釈>
 絵は画板から50cmぐらい離れて描く関係上、どうしても点とか線が細く描くし、構図も特に大きい絵の場合は全体感が取りにくい。
 一方、観る側は絵から離れた所から見始め、興味があれば近づいて見てくれるだろう。 ただ、50cmまで近づいたりしない。 遠くでは細い点とか線は見えない。 残る物は、太い構図である。

 観る側の論理に立って、客観的に描いてゆくには、「離れて描く」事である。 具体的に言うと、描いている途中で部屋の隅、出来れば少なくとも、対角線の二倍ぐらいは離れて出来具合を観ることである。そうすると、点、線の太さ、構図などが、観る側にとって心地よいかどうか確かめられる。


(2014/2/8追記) (2013/2/10変更) (2012/7/02記) 


3.3. 風景の構図は近景、中景、遠景[奈良市島田先生]

 
 <解釈>
 風景では奥行き感が重要になる。 そこで、近景として木や枝を入れて、絵中風景の大きさを示す構図が良く行われている。 山などでは遠くの山々が美しいので、つい山のみを描いてしまうが、それでは遠景の山の雄大さが観る人に伝わらない。
 近くの木と遠くの山をつなぐ中景は、大切な役割を持っている。 中景は近景と遠景が、連続して「同じ風景の中」であることを示す役割を持っている。 したがって、木があっていきなり山が出てくるのではなくて、途中に道とか林とかでつないで行く。 家とか人とかを中景の中に点在させることも良く行われている。 これらは、人間にとって大きさがよく分かるものであるので、いかにも中景の大きさが分かりやすく、奥行き感を出すのに効果的になる。 また、近景としては、人とか、傘とかも良いのは同じ理由による。

 つぎは、人物と欄干を近景、ボート、林のある半島を中景、山を遠景にした例である。 なお、その間のつなぎを湖が担っている。
(絵をクリックすると拡大します)
  
図3-3-1 バラギ湖の夏(F8)
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(2016/6/22変更) (2014/2/8追記) (2012/12/21追記) (2012/11/13記) 


3.4. 室内の構図は実物大で[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 花、果物などの静物や人物を描くときには、ほぼ実物大が「現実感」があって良い。 人は室内のものは見慣れているので、実物大だと違和感がないのであろう。

 そうすると構図はバラとか椿の花で説明すると、次のような感じか。水彩画のF2(縦192×横245mm程度)だと、たとえば↓のように花数輪程度がやっとであろう。
(絵をクリックすると拡大します)
  
椿-2号(F2)
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F4(縦332×横242mm程度)だと、たとえば↓のように花瓶に挿した一枝の椿に、彩りのリンゴなどという構図になる。
(絵をクリックすると拡大します)
  
椿-4号(F4)
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F6(縦407×横320mm程度)、あるいはF8ぐらいになると、花一枝ではおさまらなくなり、いくつかのものを組み合わせることになる。 たとえば↓貝とかガラス玉との組み合わせがある。 また、何本かのバラを組み合わせて変化をつけることも考えられる。
(絵をクリックすると拡大します)↓
  
海-追憶(F6)
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バラ(F8)
  └→詳しく見る

・関連記事
 ├1.2. 絵画の鑑賞は、対角線の二倍
 ├3.3. 風景の構図は近景、中景、遠景
 └4.1. 良い絵は遠くから光っている。ほかの絵とちがう

(2016/6/22変更) (2014/2/8追記) (2013/5/2変更) (2013/1/11記) 


3.5. パレットよりもヨーグルトの外ぶた[筆者]

 
 <解釈>
 入門時に図3-5-1右上のようなパレットを買うだろう。 写真のは筆者が絵を習い始めたときから使っているものであるが、年月を経て薄汚れている。
  
図3-5-1 ヨーグルトの外ぶたとパレット
 
中級になるころには、このパレットに不満を覚える。 すなわち色を色々のせるには狭すぎるのである。 そこで多くの方はより大型へ買い換える。 それでも「絵を描くたびに」パレットを洗わないといけない。 すなわち、大型でも狭すぎるのである。
 そこではたと考えた。 図3-5-1左(パレットの他)のようなヨーグルトの外ぶただと、いくつでも買い足せる。 第一、ヨーグルトは健康によいので、ここの読者はおそらく毎日飲んでいる。 すなわちただで廃物利用が出来る。 これで新しい絵を描くたびに洗わないですむ他に、絵の具代もわずかであるが節約できる。

 実はその他の思いがけない福次効果が大きかった。 絵がうまくなるのである。 写真の外ぶたは今使っている物であるが、一つの外ぶたに複数色を載せている。 それを混ぜてゆくと、地味で複雑な色を「多様に」造ることが出来る。 パレットの時代には塗る色は「パレットが小さいために」単調にになりがちである。 外ぶたは沢山用意できることの多様性のほかに、混ぜたい色を「外ぶた同士を」近づけることによって、さらに多様に出来る。
 論より証拠、筆者の水彩画ギャラリーを観ていただきたい。 ギャラリーは古いものが下、新しいものは上に来るように並べてある。  2009年8月ごろから外ぶたを使い始めている。 2011年末頃にはそれの使い方に慣れてきている。 使っている中間色に注目していただきたい。

 この方法のポイントは次の通り。
(2017/3/1追記) (2014/2/8追記) (2013/5/21追記) (2013/5/18記) 


3.6. だんだん筆が太くなってゆく[奈良市みずほ会T先輩]

 
 <解釈>
 T先輩を含め、筆に対する先輩方の行動を見ていると、共通するある法則があるのに気がついた。 すなわち、全員だんだん使う筆が太くなってゆくのである。

 思い起こせば絵画教室入門に際し、画材店にお任せで買ったのが図3-6-1の左側3本の筆であった。 あとで知ったのであるがそれぞれホルベインの4号、10号、12号である。
 2年ぐらいたって、先輩方の行動を見ていると、筆者の筆より太いのを使っているではないか。 聞くと、「太い方が大きな面を塗るのが楽なのよね」という返事が返ってきた。 それで先輩方に合わせて、図3-6-1の真ん中14号の筆と平筆を買ってみた。 実際に使ってみると、平筆は大きな面を塗りにくいことが分かり、没になり、14号が生き残った。
 しばらくその生活が続いていたが、2年ほどたつと、また先輩方の行動が変わってきた。 更に大きな筆を求めているのである。 節操もなく後を追い、図3-6-1の右側16号と習字用の太筆を買ってみた。 実際に使ってみると、習字用太筆は腰がやや弱くそれが不満で、没になり、16号が生き残った。

 ということで、今日現在は一番太い16号と、一番細い4号を使って水彩画を描いている。 真ん中の10号から14号は使わない。 太いのを使いたがるのは、画板の大きさとも関係があると思う。 入門のころは6号を使っていたが、8号や10号を画材によっては使うようになった。 10号画板になると塗る面積が6号に比べて3倍ぐらい広い。 筆が太いと絵の具の含みがなにせ大きいので、塗るのが楽なのである。
 もう一つ、実は4号もほとんど出番が無い。 みんなの腕が上がり、極端に言えば16号筆だけで用事が足りる。 力のいれ具合一つで、4号から16号の太さを描き分けられるようになってきたのである。 世の中には16号よりも大きな筆もあるようなので、また2年たてばT先輩も今度は18号をほしがるのではないか、と想像している。
  
図3-6-1 筆者の筆
 

(2017/3/5追記) (2014/2/8追記) (2013/6/17記) 


3.7. 水彩では水彩紙が1番ミソ![ひたちなか市藤枝しげと先生]

 
 <解釈>
 過日、画材店を営んでいる、御代田町のグレージュ店主と雑談をしていた。 僕が、「水彩は描くときに水を大量に含ませるからか、途中で紙がどうしてもまがってしまい、描きにくいんですよね。」とこぼすと、店主が「こんなものが最近あるのですよね」とみなれない水彩紙を持ってきた。

 早速買い求めてみた。
買ったのは一般にはブロック紙と呼ばれる、何枚かの紙を束ねて四隅をのり付けしでできた図3-7-1(左の図)のようなものであった。 本は一面をのり付けして製本するが、こちらは四面をのり付けしたものと思えばよいかも。 描き終わると、ペーパーナイフか何かで、一枚ずつ切り離してくださいとのことである。 ちなみに今まで使っていたのは、図3-7-2(右の図)のような何枚かの紙を束ね一面を螺旋状の針金で綴じてあるもので、スパイラル紙と呼ばれている。 この図では上のほうが螺旋状に綴じられている。
  
図3-7-1 ブロック紙の例
  
図3-7-2 スパイラル紙の例
 
他には板に一枚一枚紙を貼る方法が良く紹介されているが、携帯性に欠ける欠点があり、しろうとが扱うには荷が重いと思う。

 次に描いてみた。
結論から言うと、図3-7-3(左の図)のようにブロック紙はわずか1mm程度の紙の浮きがあったのに対して、スパイラル紙は図3-7-4(右の図)のように1cm以上の浮きのみならず、波打っている。 同じ水彩専門の紙と言え、こと紙のまがりに関してはブロック紙の圧勝であった。 
  
図3-7-3 ブロック紙のまがり
  
図3-7-4 スパイラル紙のまがり
 
ブロック紙の使用感を次に述べる。
  1. 水彩画を描いている途中では斜めの光線が入り、それが紙のまがりによる陰影につながる。 これが原因で、スパイラル紙の場合、描きにくいのであるが、ブロック紙ではまがりがほとんどないので、それによるストレスがなく、絵が描きやすい。
  2. 描き終わり写真に撮るときは、色再現性がよい自然光でやりたいものである。 ところが自然光ではえてして絵に対して斜めの光になる。 そうするとスパイラル紙では、紙のまがりによる陰影が気になっていた。 ブロック紙ではこれも気にならなく、写真撮影がやりやすい。
  3. 今回買ったブロック紙はホワイトワトソンブロック(HW3)(F8)であったが、今まで買っていた各メーカーのスパイラル紙にくらべ、色白で目が細かった。 絵具の乗りが非常に良く、今回の画題にマッチしているようで、気持ちよく描けた。
  4. 一時に一枚しか描けないので、特に屋外持ち出し風景画作成時に不便なことが、欠点といえば欠点である。
今回、ブロック紙を使って描いて撮影してみた作品の、出来映えを紹介する。
(絵をクリックすると拡大します)↓
  
図3-7-5 手入れ(F6)
  └→詳しく見る

 なお水彩用紙の使い勝手に関しては、今回取り上げた「紙のまがり」以外に、紙の色、目の粗さ、丈夫さなどのいろいろな違いが影響しているようである。 どの紙がよいかは、個人の好みや画題によるところが大きいので、興味があれば藤枝しげと先生これが1番ミソ!を読むと参考になるかも知れない。
 またこの節のテーマに直接関係ない話であるが、図3-7-6のように、今回8号の紙に6号で絵を描いてみた。 余白が額縁のようであり、描いている途中から額縁効果で、あたかも腕が上がったような気になり、大変気持ちよかった。 額縁効果については4.4. よい額は、自分に合った服のようなものを参照。

  
図3-7-6 額縁のように余白を残して、絵を描く
 
・関連記事
 ├これが1番ミソ!藤枝しげと先生
 └4.4. よい額は、自分に合った服のようなもの

(2017/3/25訂正) (2016/6/22変更) (2014/2/8追記) (2014/1/1記) 


3.8. 錯覚に慣れて、飼い慣らす[筆者]

 ├ 3.8.1 下描き時の錯覚および、その対処法
 └ 3.8.2 彩色時の錯覚および、その対処法
 
 <解釈>
 そもそも具象画は、少し大胆に言ってしまうと、二次元で描いたものを三次元の立体と、人間の脳に思いこませる、すなわち錯覚させる技術である。 出来上がった絵が観る人を上手くだませると、「この絵は奥行きがあるね」とか「まるで家に見える」とか知覚してくれる。
 このことは裏返して画家の立場から観ると、自然界の物体を間違って認識してしまうことになり、絵を描く時に少々困る場合が出てくる。
 世の中で害になる錯覚の例として、車の車幅を紹介しよう。 車幅は、車が丸みをおびているか、寒色系であると、小さく錯覚してしまう。 その結果、車同士のすれ違いの時に擦りやすい。 絵を描くときには、錯覚したまだと、小さく描いてしまう。 実物より車を小さく描いてしまうと、絵全体のバランスが崩れ、絵をまとめる=下描きに苦戦することになる。
 
 実に色々な錯覚があるようだが、ここでは絵を描いているときに、筆者が実際に困った錯覚五点と、それへの対処法を紹介してゆこう。 
 錯覚五点を次のように作業工程順に分類して説明してゆく。

 3.8.1 下描き時の錯覚および、その対処法

 絵を描くにはまず下描きとして、鉛筆などで形を写生する訳だが、ここで多くの方は、角度が違う、大きさが合わない、長さが取れないので四苦八苦する。
 それの原因の一つとして考えられるのが錯覚である。 錯覚してしまうために、現実を正確に認知出来ない → 認知のまま描くとうまく写生できない という流れである。

 まず、下描き時の錯覚の例を挙げる。
(写真をクリックすると拡大します)↓

引用: 図3-8-1 左建物の右側傾斜角度に影響されて、右のほうの建物角度を錯覚してしまう。
 

引用: 図3-8-2 周りが大きいと、小さく錯覚し、周りが小さいと、大きく錯覚してしまう。
 

引用: 図3-8-3 同じ長さでも、縦の方が長く錯覚してしまう。

 錯覚すると写生時に、上級者でも形を取るのに苦労するようで、対処法も色々編み出されている。 形の錯覚への対処法を整理して、次に紹介しよう。
  1. 絵を描く対象を、パーツに分けて考える。 パーツとは花瓶とか、家とかである。 パーツで絵を構成するという世界観である。 次に、パーツを四角とか三角とか、丸でおおざっぱに表現する。 筆者は四角で表現している。 下のスケッチに残る縦横の線が、その名残である。 人物なので、顔、胴体、足で3つのパーツとしている。
    (絵をクリックすると拡大します)↓
      
    図3-8-4 人物10分スケッチx2・その1

  2. 各パーツ間でバランスが取れているかどうかを、対象のそれと比較して、同じバランスになるように修正してゆく。 このときに、パーツ内の細かいところに目が行かないように、意識して気をつけることがポイントである。
  3. パーツ間の配置が決まったら、今度はパーツ内だけを注視して下描きを、パーツごとにやってゆく。 このときは、決して注視するパーツの外側は観ないのが、ポイントである。 上の絵で言うと、顔を描いているときは、顔だけ注視しながら作業する。
  4. 人物では斜めの線の角度に苦労するが、上のようにしてやれば、わずか10分間のスケッチでも、バランス良く絵を描けた。
  5. 対象を写真に撮り家に帰ってから、出来れば絵と等倍にして比較するのも、間違いを見つけるには有効と考える。
 見方を変えて、形の錯覚を起こしやすい対象物と、そうでもないものがある。 それが分かっていれば、錯覚を起こしやすいものは、気をつけて描くとか、なるべく描かないですませるといった作戦が取れる。
 形の錯覚が多い例は建物、特に寺院の三次元のカーブを持つ屋根は鬼門である。
繰り返しの多い瓦屋根を見てしまうと、反対側の瓦の傾斜角度を読み間違えてしまう。 同様に屋根下の梁の繰り返しも見てしまうと、その反対方向の梁の角度を錯覚してしまう。 ある先生曰く、法隆寺の五重塔を描ければ一流、だそうである。 さらばということで、筆者も描いてみた↓
  
筆者も描いてみた
  └→詳しく見る

が、五重塔は二度と描かないと思ったぐらい、苦労した。 特に、屋根を下から見上げる構図は難しいと感じた。 梁の錯覚の魔力である。

 3.8.2 彩色時の錯覚および、その対処法

 具象画では下描きが終わると、一番薄い(明度の高いというか明るい)ところに合わせて下塗りし、その上に色を重ねて彩色してゆく。 彩色工程では、色を塗ってゆくにつれて、明度が変わってゆく、色合いが変わってゆく、という現象に直面し、苦労することになる。
 それの原因の一つとして考えられるのが錯覚である。 錯覚してしまうために、現実を正確に認知出来ない → 認知のまま描くとうまく彩色できない という流れである。
  まず、彩色時の錯覚の例を挙げる。
  
図3-8-5 周囲に暗い色を塗ることにより、それに影響されて明度(明るさ)を錯覚してしまう。

(写真をクリックすると拡大します)↓
 同じ犬 
引用: 図3-8-6 黄色と青色の犬が描かれているように見えるが、双方同じ黄土色!
周囲の色を塗ることにより、それに影響されて色を錯覚してしまう。
 
 彩色時の錯覚は、色塗り作業中常におきている。 明度・色の錯覚への対処法を整理して、次に紹介しよう。 
  1. 明度・色の錯覚ともに、周りの環境の影響を受けたのが、錯覚の原因であるので、それへの対処が必要となる。
  2. 部分的に完成させていくやり方は、完成後に周りを完成するたびに、錯覚への対処が必要となる → すなわち修正を迫られる。 たとえば、空を完全に描き上げ、その後に森を描き上げるというやりかたは、そのたびに新たな錯覚への対処を迫られることになる。 これは無駄が多い。
  3. そこでお勧めは、絵全体を下塗りし、完成したところで、その上に色を重ねて彩色してゆく方法である。 つまり、まんべんなく手を加えることにより、徐々に絵を完成させてゆく。 具体的な手順は2.6. 下塗りは一番薄いところから2.7. 彩色は白色、黒色を使わないを見ていただくと、イメージをつかめるだろう。
  4. つまり、徐々に環境を変化していって、錯覚の影響を弱めようという対処法である。
  5. 錯覚の他に、水彩画の場合は時間経過と共に色あせが起きて、時間と共に色が薄くなって行く。 これは、絵の具が画板である紙にしみこんでゆくために、表面に残る色素が少なくなってしまうことから起こる。 感覚的には、これが落ち着くためには一週間ぐらいかかる。 これへの対処としては、落ち着いたらもう一度、手を入れることになる。
 明度・色の錯覚への対処法として、徐々に全体的に濃くしてゆく例を紹介する。 油絵の場合はこの例ほど徐々にやる必要は無いが、水彩の場合は一度濃くすると後戻りが難しいため、下のような感じでやってみると、良いだろう。

  
図3-8-7 下描き完了。
主題である手を下塗り
 
  
図3-8-8 下塗り完了。
手が明るい感じに変化(錯覚)
 
  
図3-8-9 徐々に彩色開始
 
  
図3-8-10
周りが固まってきたので、手に加筆
 
  
図3-8-10
図3-8-11
細部に加筆し、全体のバランスを調整。
ここまででほぼ完成
 
(絵をクリックすると拡大します)↓
  
図3-8-12 お花(F6)
  └→詳しく見る


(2017/6/5変更) (2016/6/22変更) (2014/6/4追記) (2014/5/19追記) (2014/4/27変更) (2015/4/23記) 


水彩画ネットワーク 退職後水彩画を描き始めた人へ


ようこそ! (2017年10月13日 金曜日更新)

4. 上級編(6年ぐらいたって、なれた頃に効く名言)


4.1. 良い絵は遠くから光っている。ほかの絵とちがう[奈良市四季彩会S会長]

 
 <解釈>
 光るには、まず目に止まる、つぎに構図がよいか配色がよいと感じさせることであると考える。 広告で意味もないのに美女の顔を出して、その力で広告を読ませようと言うのと同じ作戦である。
 目に止まるには美女の顔を出すほかに、明暗や強弱を工夫するなどの手がある。 目にとまる力をフラクタル次元を利用して、注目度数という形で定量化も試みられている。 一方、構図とか配色を定量的に評価する方法は、筆者は知らない。 ご存じの方は教えていただきたい。 そこで、この節の以下の議論では注目度数についてのみ述べることとする。

 つぎのグラフは、世界で最も高価に売買された絵画の上位5位までの注目度数を距離別に示したものである。 なお、第一位のJackson Pollockの「No. 5, 1948」の高解像度写真が見あたらないので、代わりに彼の同じ作風の代表作である「Blue Poles:Number 11,1952 」を使用する。 ここで各絵画に共通しているのは、ある距離にピークを持つ、凸型曲線を取ることである。 言い換えれば、遠くで注目度数が高い。 
  
図4-1-1 上位5位までの注目度数
 
 一方、スナップ写真とか筆者の描いた絵(「小辺路の春」)では、遠くでは注目度数が低く、近づいてやっと注目される。 言い換えれば、遠くではほとんど注目されない。
  
図4-1-2 スナップ写真と筆者絵の注目度数
 

 上のグラフを眺めていると、色々な解釈が可能であろう。 たとえば、 ここで、グラフを見るに際して注意することが一点ある。 注目度数の絶対値に意味はないため、絵と他の絵の比較はできない。 注目度数が高いことが、良い絵であるという話にはならない。 あくまでも、ある絵がどの距離で一番注目されるのかを表すものである。 
・注
[注1]: 第一位のJackson Pollockの「No. 5, 1948」の高解像度写真が見あたらないので、代わりに彼の同じ作風の代表作である「Blue Poles:Number 11,1952 」をここでは使用する。

・関連記事
 ├世界で最も高価に売買された絵画
 ├1.2. 絵画の鑑賞は、対角線の二倍
 ├1.3. 絵画は遠くにありて眺めるもの、写真は近くにおいて見るもの
 └3.2. 絵は離れて描け

(2017/3/26追記) (2014/2/8追記) (2014/2/8変更) (2013/1/5追記) (2012/08/6記) 


4.2. 人物画はモデルから離れてスケッチしよう[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 室内画の中でも、モデルを使った人物画を描くときには特別な注意点がある。 モデルさんから1.5m離れてスケッチすると、人間の目には下左の写真(1)のように見える。 それを忠実にスケッチすると、先生から「腰が細い、足が細い」と注意される。 生徒は「見たまま描いたのに」と不満が残る。

 そのすれ違いは、先生は頭の中にある人物像、すなわち遠くから観たモデル像を思い浮かべるのに対し、生徒は目の前の現実の人物をスケッチすればよいと思うことから起こる。 言い換えれば、先生は下右写真(2)のように描きなさいと言うのに対し、生徒は下左写真(1)が現実に忠実ではないかと思うことに起因して、すれ違っている。

(クリックすると拡大します)
  
(1)1.5m離れてスケッチ
  
(2)遠く離れてスケッチ
 
 鑑賞者は必ず1.5m離れて観るわけではなく、遠くからやってきて見始める。 すなわち先生は鑑賞者の立ち位置が遠くの場合に自然に見えるようにという、指摘である。
 それでは、先生がこうスケッチしてほしいという理想の姿に、写真を加工してみよう。 左写真(1)はモデルから1.5mはなれて、目の位置にカメラを置いて撮影したものである。 一方右写真(2)は左写真を加工したもので、10号で説明すると、腰回りが2cm広がり、座高が3cm高くなっている。 言い換えると腰回りが豊かになり、背も高くなっている。 この数値は、背景壁の縦の筋を垂直に加工し、そのとき2cm広がったので、比例配分して縦に5%延ばしたことが根拠になっている。

・関連記事
 ├1.2. 絵画の鑑賞は、対角線の二倍
 ├1.3. 絵画は遠くにありて眺めるもの、写真は近くにおいて見るもの
 ├3.2. 絵は離れて描け
 ├3.3. 風景の構図は近景、中景、遠景
 └3.4. 室内の構図は実物大で

(2016/7/13訂正) (2014/2/8追記) (2013/1/27記) 


4.3. 手早く絵を仕上げ、かつ上手く見せるこつがある[奈良市島田邦麿先生]


 <名言の詳細>
 旅などで手早く絵を仕上げたい時があります。 素早くかつ上手に見える描き方を伝授しましょう。

 まず概略の作業手順を述べます。
 スケッチブックは4号位、大体の構図はおおまかに薄く決めて後は一発勝負、細書きか中細サインペン、こる人はたけペンか箸のけずったもので下絵をかき、思い切って感覚的に色をおいていきます。 軽やかで、すばやい筆のタッチが大切、余白を残す場合もあります。
 さらに、屋外でのスケッチの場合は、固まったパレット絵の具セット(絵の具は2重になっています)と、水入れは折りたたみのものか,茶缶のふたのようなものを用意します。

 つぎに描き方のポイントを述べます。
  1. 先ず描きたいものがひらめくことですが、ひらめかなくても興味ある対象があることです。
  2. 非常に大まかな構図を、すばやく薄い鉛筆で決めます。
  3. できたらサインペンや油性の筆で、よく見ながら思い切って描きます。 正確さが問題ではなく、把握力の、全体のバランスの問題です。
  4. つぎに絵の具を使い、思い切って筆を運びます。
  5. 筆はやわらかめ、水を多めに使い、濃くしたいところは少し筆を押す、つまり濃淡をつけます。
  6. 要点から次第に周りに筆を広げてゆきます。
  7. 一筆勝負のつもりで。色のハーモニー、明暗、要点のでき、バルール、などを考えて仕上げに持ってゆきます。
  8. なお、余白を計算してむしろ残すべきは残します。
やはり3,4,5が大切でしょうか。
大切なことは、感性を澄ますこと、そして決断です。 しかしそれには大事な下地がいるのですが、時にはだれもがやってもいいことなのです。 すばやい把握と瞬時の感性が養えます。

 <解釈>
 すばやい把握と瞬時の感性にはほどとおい、退職後水彩画を始めた不肖の弟子が、実際にやってみた。

 2013/07/11にまず、軽井沢18号線沿い湯川のたもとから、浅間山がこの時期にしては珍しく顔を出したので、雲で隠れてしまわぬうちにスケッチしてみよう。↓
  
図4-3-1 スケッチ対象(湯川のたもとから、浅間山)
 
 スケッチブックはあいにく8号しか持っていなかったので、4号はこれぐらいかと枠を作って、その中で描いてみたが、後で測ってみたら5号程度であった。 教えの4号位より大きめである。 一筆勝負にするために、2時間で描き上げることにして背水の陣で作業開始。 まずは薄い鉛筆での構図決めである。 いつもの水彩画は4Bを使うが、今日は2Bの鉛筆を用いてみた。↓
  
図4-3-2 薄い鉛筆での大まかな構図決め
 
 スケッチペンを用いて、線を確定しながら詳細化してゆく。 構図はこの段階で確定してしまう。 この段階で1時間経過。↓
  
図4-3-3 線を確定しながら詳細化
 
 あと残り1時間である。 いよいよ絵の具を使い、色を塗ってゆく。 筆は習字用の筆を使った。 いつもの水彩用筆より太く腰が弱く、かつ水の含みがよい。 外ではパレットが小さく水入れが一つしかないので、一色ずつスケッチブックの上で重ねて行く感じになる。 不便である。 まず橋を中心にしてその回りから描き始めて、だんだん広げていった。 手前の処理など、描き足りない感じを残しながら、時間切れで終了した。↓
(絵をクリックすると拡大します)
  
図4-3-4 浅間山(2時間スケッチ)(F5)

上手く見せられたかどうかは不明であるが、なんとか雲で浅間山が隠れる前に完了した。

 この絵に関して島田先生から次の言葉をいただいた。
「参考作品からー構図はうまくいっていますが、塗りがやはり単調です。色の濃淡と塗り方が丁寧すぎるのかな。 速描きの場合はタッチの大きさや方向、濃淡が絵を生き生きさせます。ま試みの段階だから、色々試みてみてください。」
 上のコメントを頭に入れて、2013/08/24に毎年東御市芸術むら公園で行われているスケッチ大会で、筆のタッチ、色の濃淡と塗り方に気をつけて、南米のネズミであるマーラを描いてみた。 主に平筆を使うことにより塗りを倹約し、1時間で仕上げた。↓
(絵をクリックすると拡大します)
  
図4-3-5 マーラ(1時間スケッチ)(5号)
  └→詳しく見る

この絵に関して会場の講師から次の言葉をいただいた。
「あとは、スケッチペンの使い方にリズム感を持たせると、さらによく見えるでしょう。」

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 └2.4. 筆は慎重に選ぶべし

(2017/4/11追記) (2016/6/22変更) (2014/2/8追記) (2013/8/25追記) (2013/7/29記) 


4.4. よい額は、自分に合った服のようなもの[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 自分に合った服装を見つけてきたとき、あなたはフィットした自分に満足するはずである。 絵も同じように、それにフィットした額に入れると、絵がぐんとよく見えるはずである。
 言い換えれば、絵と額が別物になってはいけない。 一体となって絵を引き立てるには、絵の中の色と額の色に何らかのつながりも必要である。 同系色ないしはたがいに響きあう関係の色が絵の中にあって、はじめて関係を持ちながらも絵を最大限生かす、ということになる。 マットも同じことが言える。 あまり難しく考えずにそのフィーリングを大切に養ってゆけば良い。

 良い額とマットを選ぶには、つぎの順序がお勧めである。 なお水彩では、額の幅は油絵と違って細身が普通である。

水彩画の場合で、絵にあった額と合わない額の例を紹介しよう。↓
(絵をクリックすると拡大します)
 
歌姫の道
  
図4-4-2 合わない額

 なお、風景画の額とマットの色の組み合わせについては、ある場合には定番とも言えるものが存在するので、紹介する。 ある場合とは、日本に多い、緑と茶を基調とした風景についてである。 
 この場合、マットは薄めのベージュが定番である。 これには、額は少し地味な茶か緑系統が合う。 例を示すと、つぎの図4-4-3に緑系統の額とベージュ・マット、図4-4-4に同じ絵で額を茶系統に置き換えた物を紹介する。 この絵の場合、額はどちらを選択しても良いが、強いて言えば、春夏秋に出品するなら緑、冬の作品展へ出品するなら茶系統、と言ったくくりかも知れない。
 ここで説明した定番とは異なるが、この絵では空の紫がかったところを生かしたマットにしたいとか、ベテランになると別の解き方もあると思う。 自分のフィーリングで決めれば良い。
(絵をクリックすると拡大します)
 
奈良公園の春
  
図4-4-4 茶額にベージュ・マット

(2017/4/17変更) (2016/6/22変更) (2014/11/14追記) (2014/10/21改訂) (2013/11/26記) 


4.5. たかが色、されど色々[筆者]

 ├ 4.5.1 人間の色認識の特性
 ├ 4.5.2 絵の具の特性
 └ 4.5.3 人間の特性、絵の具の特性を踏まえた、混色のこつ

 <解釈>
 市販されている絵の具はたかだか3桁の数であるが、画家の表現したい色はその中に含まれていることはまれである。 さらに上級者になるにつれ、緑を中心として、自然界の色に比べて絵の具の色は生々しすぎ、不自然に思えてくる。
 そこで混色して、目的の色を作る訳である。 ここでは、4.5.1で人間の色認識の特性4.5.2で絵の具の特性を、画家向けになるべく平易に紹介する。 最後に4.5.3で人間の特性、絵の具の特性を踏まえた、混色のこつについて紹介する。 画家向けに平易にするために、説明が専門家から見ればやや荒いところがあるが、ご容赦いただきたい。

 4.5.1 人間の色認識の特性

 一般的に紫・藍・青・緑・黄・橙・赤の7色が虹の配色であるが、それぞれ光の特定の波長のものを表している。 人間はこれだけの色を認識でき、それらは可視光線と呼ばれている。

引用: 表4-5-1 可視光線波長は目安で、決まっているわけではありません。 1nm = 1ナノメートル = 10-9 m
波長 (nm)380〜430430〜460460〜500500〜570570〜590590〜610610〜780
色 相

 虹はある色から他の色連続して移り変わるため、実際には自然界には無限の色がある。

  
引用: 図4-5-1 虹の色(上の表とは左右が逆に表現されている)

 虹は7色であるが、人間の色認識を司る目の錐体細胞はわずか三種類しかない。 wikipediaによれば
 人間の網膜には長波長(黄色周辺)に反応する赤錐体(L)、中波長(黄緑周辺)に反応する緑錐体(M)、短波長(青周辺)に反応する青錐体(S)の三種類があり、それぞれの錐体細胞は特定の範囲の波長に最も反応するタンパク質(オプシンタンパク質)を含む。これらが可視光線を受け、信号が視神経を経由して大脳の視覚連合野に入り、ここで3種の錐体からの情報の相対比や位置を分析して色を知覚している。

  
引用: 図4-5-2 人間の錐体細胞 (S, M, L) と桿体細胞 (R)それぞれの反応スペクトル

 上の図を見ると、赤錐体(L)と緑錐体(M)の反応ピーク間隔が狭いのが目につく。 言い換えれば人間は、緑周辺から黄色・橙色にかけての色認識に優れている。 その昔、人類の祖先が木の上の緑の多い環境で生活していたころ、木の種類、熟した木の実を見分ける必要性があった名残であろう。
 目からはたった三種類の色信号が大脳へ来るだけである。 大脳が三種類の色信号を総合的に分析して7色を知覚している。 たとえば青錐体は、紫・藍・青を感知すると、それをすべてS信号として大脳へ報告する。 青錐体だけではSは紫なのか藍なのか、はたまた青なのかは分からない。 赤錐体は紫と藍、緑錐体は藍と青に反応するので、赤錐体、緑錐体の反応情報を見て、紫・藍・青の区別をする。 特に特徴的なのは紫で、青錐体反応、赤錐体反応、緑錐体反応せずであれば、大脳は紫と判断する。 したがって、青色と赤色を混ぜれば、大脳はまちがって紫と錯覚してしまう。
 錐体細胞から三種類の色信号が来たときの大脳の働きをまとめると、次の図のようになる。

  
 
引用: 図4-5-3 RGB色相環。赤・緑・青を等間隔に置く

 この図の見方を説明する。 青錐体のみからの信号が来たら「青」と大脳が認識する。 同様に赤錐体のみだと「赤」である。 青錐体からが強くて、赤錐体からの信号を少し混ぜると紫と認識する。 赤錐体からの信号をさらに増やすとピンク(正確にはマゼンタ)と認識する。
 

 4.5.2 絵の具の特性

 絵の具は色を混ぜると徐々に濁った色になる
 その原因は絵の具にある。 絵の具の色は下の図にあるとおり、単色ではないどころか、複雑怪奇である。

  
引用: 図4-5-4 絵の具のスペクトル(サクラマット水彩)
 
 たとえば上の図のやまぶきいろに注目すると、色相が緑・黄・橙・赤の成分を含んでいる。 これがやまぶきいろに見えている。 緑は緑錐体が反応し、黄・橙・赤は赤錐体が反応する。 緑成分がやや少なめなので、赤に近いやまぶきいろに見えるのであろう。 その隣の黄色であるレモンいろを見てみると、同じく色相が緑・黄・橙・赤の成分を含んでいるのみならず、青の成分も多少含んでいる。 緑成分がやまぶきいろに比べて多いので黄色に見えるのであろうが、それにしても多様な色を含んでいるのにきれいな色に見えるのに驚かされる。

  
引用: 図4-5-5 あいいろ・ビリジアン・あお・きみどり(サクラマット水彩)
 
上の図であおビリジアンに注目すると、たしかに青成分が多いが、緑成分もかなり多いのに注目していただきたい。

 赤と紫系絵の具の混色には特に注意が必要であるのでつぎに説明するが、それぞれ別の事情がある。
共通の事情としては、図4-5-2を見てほしいが、どちらも人間の錐体細胞には知覚されにくいということがある。 赤は黄色に比べて半分以下、紫も青に比べて半分程度しか知覚されない。 裏返して言うと、他の色があると、そちらの方に目がいってしまう。
 赤系絵の具の場合、赤系以外の絵の具と混ぜると、てきめんに色が濁る。 赤は緑錐体・青錐体からの反応が無く、赤錐体のみからの反応がある場合に、大脳が赤と認識する。 図4-5-4を見ると、やまぶきいろでさえ緑色を大量に含んでいるので、緑錐体が大きく反応する。 赤の他に緑、青錐体が反応すると大脳は灰色と認識してしまう。 これと先ほどの共通の事情が合わさって、てきめんに濁ることになる。
 紫系絵の具の場合、紫と赤系以外の絵の具と混ぜると、てきめんに色が濁る。 赤・青錐体からの反応があり、緑錐体からの反応がないということで紫と大脳は認識している。 したがって図4-5-2を見ていただきたいが、緑錐体の反応するような絵の具を使うと大脳は灰色と認識してしまう。 これと先ほどの共通の事情が合わさって、てきめんに濁ることになる。 緑錐体が反応するのは青・絵の具のあいいろ・緑・黄・橙系の絵の具、要するに紫と赤系以外の絵の具全部である。

 以上まとめると、絵の具はそれぞれが複数の色相を持っており、絵の具と絵の具が補完関係にあるわけでない。 これは絵の具が色彩理論が確立される前からあり、伝統的に自然界にあるきれいな色を集めた関係からかも知れない。 一方、たとえばプリンターのインクは色彩理論にしたがい、マゼンタ、シアン、イエローのわずか三色でほぼ完全に、可視光で見られる色々を表現できている。 これはそれぞれのインクがきれいに整理され補完関係にあることを示している。

 4.5.3 人間の特性、絵の具の特性を踏まえた、混色のこつ

  1. 風景画の場合は
     絵の具そのまま、あるいは二種類程度を混ぜたのでは、自然界の風景では「生々しすぎる」。 複数の色を混ぜると落ち着いた色になり自然な感じになる。 これは自然界は花以外はきれいな色が少なく、多数の色相が混じり合う複雑な世界であるからであろう。 また、絵の具を混ぜるのでなく、画板上で重ね塗りすると、さらに深みが出てくる。
     4.5.1節で示したように、人間がほんの少しの違いに敏感な色は、緑・黄・橙である(図4-5-2参照)。 木の葉やそれに実る果物など、風景で中心となることが多い色々である。 それらの色の自然さには注意を払いたい。
     この中で緑は、特に使用頻度が高い色である。 緑は絵の具の緑色を塗るのではなく、少なくとも青系統の色と、黄色系統(黄土から茶系、暗い場合はこげ茶系)などを混ぜるとよほどリアリティーが出てくる。 ここで赤系統の色をほんの少し混ぜると、さらに落ち着いた緑色が現れる。 筆者も入門の時、沢山の緑系統の絵の具を一式買いそろえた。 が、これから出発した緑色は、どうも生々しすぎて落ち着かず、結局今では緑系統の絵の具はお蔵入りとなっている。

    (絵をクリックすると拡大します)
      
    図4-5-6 藤の咲く頃(F8)
      └→詳しく見る

    上の絵では、緑は青系と黄土色・茶色系の絵の具を混色、塗り重ねして、自然な感じを狙っている。

  2. 花を描く場合は
     花は自然界では例外的に、きれいな色をしている。 絵もきれいに描きたい。
    いままで落ち着いた色にするには・・・という話ばかりしていたが、一転ここではきれいな色にするにはという話をしたい。
     きれいな色を出すには4.5.2節で示したように、なるべく色を混ぜないことである。 それには二つ方法が考えられる。
     まず、花の色である赤系紫系黄色系の絵の具を片っ端から買いそろえて置く。 混色はなるべく避け、絵の具の色をそのまま使いたい。 暗いところは絵の具を濃く塗ることで表現したい。 がどうしても混色したい場合は、赤は赤系の絵の具と、紫は紫・赤系の絵の具と一回だけにする。
     つぎに、混色はしないですませる方法がある。 絵の具原色を小さな点や細い線にして、直接画板に載せて行く。 すぐ隣に違う色を、やはり小さな点や細い線にして載せて行く。 けっして重ね塗りしない。 この方法は、プリンターやディスプレーでやられているものである。 画家でもゴッホや印象派の一部の画家がやっている。 絵全体のごく一部であれば、作業量もやれる程度では無かろうか。

    上の図4-5-6では、藤は絵の具を混ぜないで、傘、服などの人工物は一回混色にとどめて、きれいな色を表現している。

  3. 混色の感覚をやしないたい場合は
     混色の練習用に便利なツールがある。 絵の具の色の混ぜ合わせ(ネイルアートにも)である。 プリンターで使われている、色の三原色を使い、混色をするとどんな色ができあがるか、PC上でシミュレーションできるので感覚をやしないやすいのではないか。
     ただしこれは絵の具を使った混色ではなく、したがって色相の複雑さは表現できていないため、絵の具でやると実際にはこれで表されたものよりも濁った、落ち着いたものになる。
     実際に絵の具を使い混色を繰り返して行くと、だんだん感覚も出来て行く。 習うより慣れろである。

・関連記事
 ├引用: 虹の七色とスペクトル型
 ├引用: 虹の配色
 ├引用: 桿体細胞
 ├引用: 原色
 ├引用: 色相
 ├引用: 絵の具のスペクトル(サクラマット水彩)
 ├引用: 絵の具の色の混ぜ合わせ(ネイルアートにも)
 ├2.1. 赤系の絵の具を買い足そう
 ├2.2. 紫系の絵の具も買い足そう
 ├2.7. 彩色は白色、黒色を使わない
 └2.9. 自然界には絵の具そのままの色はない

(2017/4/18文章推敲) (2016/8/6文章推敲) (2016/6/22変更) (2014/8/16記) 


水彩画ネットワーク 退職後水彩画を描き始めた人へ


ようこそ! (2017年10月13日 金曜日更新)

5. 先輩たちのエッセイ


 この章では上とは打って変わって、人生の先輩方の、絵とか写真にまつわる各種話題提供と、それへの筆者の感想を気楽に綴ります。

5.1. 画題は必要か否か?[川西市中山繁樹先輩]

 
 <先輩のエッセイ>
 画題を考えるのは結構面倒です.前にも言ったと思いますが,画題は不必要とする人もいます.クラブの我が先生は必要派です.写真は文字と異なり不完全な記号であるので,キャプションがないと撮影者の意図が伝わらないというわけです.審査のとき,”何を撮りはりました”と聞かれ返答に窮します.私は,不必要派ですが,クラブの中では先生に従っているので,無理して画題はつけます.

 <筆者のエッセイ>
 作品は発表後は、作者の思いとは別個に存在します。 観る人がどう作品を捕らえるかは、観る人によります。 が、作者がその意図をより具体的に伝えたいかどうか、によるのではないでしょうか。
 ここで恐らく左脳型の「作品をありのままに観る人」と、右脳型の「作品をきっかけに空想の世界に飛び立つ人」とで反応が異なると想像します。

 一枚の絵があります。(絵をクリックすると拡大します)
  
図5-1-1 Yさん(F8)
  └→詳しく見る

 画題がなければ、この絵は「果物やつぼのある室内画」と、左脳型右脳型ともに認識するはずです。
 ところが現実には画題を「Yさん」とつけています。 そうすると左脳型は「この画題は間違いではないか」という反応をするでしょう。 一方、右脳型は「Yさんとなぜつけたのだろう?」とまず考え、作者の意図を探る空想の世界に入るでしょう。 画題のないときに比べて、違う世界に入っていくことになります。 「Yさんとはどんな人だろう」「Yさんをどこで表現しているのだろう」・・・。
 作者の意図は、Yさんの人柄を色と、彼女の作品で表現することでした。

・関連記事
 ├右脳派か左脳派かでこんなにも違うの!?
 └右脳派・左脳派診断

(2017/4/25変更) (2016/6/22変更) (2014/2/8追記) (2013/4/26記) 


5.2. 人はなぜ絵を描くのか?[奈良市島田邦麿先生]

 
 <先輩のエッセイ>
 人はなぜ絵を描くのか、絵を描くものは時にそんな疑問がよぎる。 人間をはじめたときから絵は洞窟や岩壁に絵を描き始めた。 これは人間の本能と深くかかわる。 描きたいという本能が人間らしくなるほどに膨らむ。 不思議なものだ。 それ以上分析すると簡単に済みそうでないのでやめるが。 ただ筆をもたぬひとも、できたら一度もってみてほしい。 心惹かれるものを描いてみる。 そこにひょっとしたら自己解放感があるかもしれない。 あるいは自覚なくても自己発見さえも。 そこに喜びが沸いてきたら最高である。
 正道からいえばまず対象をよく見ることから始める。 よく見るとそれはなんらかの認識につながる。 それを自分の感性で表現する。 なんとすばらしいことではないか。 しかし最初からそううまくはいかない。 そこに筆者が言われるよき指導者も必要になってくる。 1歩ずつでも上昇志向があれば必ず階段は上っていける。 そして表現も確かで広がりのあるものになっていく。 人は自分の脳の少ししか使っていないのだから。 私は指導しながらいつもそんなことを願っている。

 <筆者のエッセイ>
 僕はなぜ絵を描くのか、それは、家の向かいに水彩画教室があり、退職後ボケ防止に何をしようかと思ったときに、たまたま目にとまったからである。 目にとまったのには訳があって、その前の瞬間までは「指を使うのがボケ防止に良いらしいということで」陶芸をしようかと、ぼんやりと考えていた。 水彩画・・・まてよ、陶芸ほど制作物の処理に困らないはずだ。 年10枚制作するとして死ぬまで30年間で300枚になる。 それなら押し入れに入れてもたいしたことは無いだろう・・・。 と考え、水彩画を習うことにした。
 孫たちを見ていると、一人は絵を描くのが好き、もう一人は新幹線が好き、と教えることがないのに、それぞれ好みがある。 一人一人の個性というか、それぞれの世界に浸って遊んでいる。 音楽が好き、絵が好きとか、酒が好きとか人間ごとに感性がバラバラであるが、人類全体ではそれぞれに同類が沢山いる。 不思議なものである。
 絵を描き始めて、自分は自然を、木を森を花をまったく観ていなかったということに気がついた。 一方意外なことにであるが、人間を一番観ていた、ということを知った。

(2013/6/6記) 


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