使ってみて役に立った、画家達の名言集/p2

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水彩画ネットワーク 退職後水彩画を描き始めた人へ

2. 初級編(絵を習い始めた頃に効く名言)


2.1. 赤系の絵の具を買い足そう[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 水彩画を習い始めるとき、まず24色の絵の具セットを買うだろう。 花を描こうとすると24色では足りないので、混ぜて望みのものを作ろうとする。 実際にやってみたら分かることであるが、混ぜると色が汚くなる場合と、それほどでもない場合がある。 難しいのは、赤系と紫系のきれいな色を作る場合である。 なぜ難しいかという理屈は4.5.2 絵の具の特性をご覧あれ。
赤系の花は描く機会が多いのでので、とりあえずは次のものを買い足すのが島田先生のお勧めである。 ここで黄色が例外となっているが、黄色系の花を書く場合、パーマネント イエロー レモンに白を混ぜると色が濁るので、ネイプルス イエローもほしいところである。
 これらをを使って描いた絵を次に紹介する。
 (絵をクリックすると拡大します)
  
図2-1-1 Yさん(F8)
  └→詳しく見る

なお、カドニウム系の絵の具は有毒性なので、長期間手につけておくとかはしないように注意が必要と思う。

追記[東京都錦織先生[参照1]] 
 きれいなピンクを出すには、オペラ がお勧め。
オペラを使って描いた絵を次に紹介する。
 (絵をクリックすると拡大します)
  
椿-6号(F6)
  └→詳しく見る

追記[奈良市島田先生]
 上品な茶色がほしいなら上の他にマースイエローがお勧め。
 油絵なら、さらに他に次のものがお勧め。
(2016/11/23追記) (2016/6/22変更) (2014/8/16追記) (2014/2/8追記) (2013/2/12変更) (2013/2/6追記) (2012/12/29追記) (2012/7/21記) 


2.2. 紫系の絵の具も買い足そう[筆者]

 
 <解釈>
 紫系のきれいな色を出すのは赤系と同じく難しい。 みずみずしい花を描こうとすると、色を混ぜるとどうしても濁ってしまい、試行錯誤の末はたと思いついた。そうだ。 色を混ぜてきれいな紫を作るのは無理なんだ。 なぜ難しいかという理屈は4.5.2 絵の具の特性をご覧あれ。
紫系の花を描く場合は、次のものを買い足すのがお勧めである。
(2014/8/16追記) (2014/2/8追記) (2012/07/21記) 


2.3. カメラはゆがんでいる[佐久市K先生]

 
 <解釈>
 スケッチに出かけると、その場では終わらずに写真を撮影し、家で残りを完成するだろう。 また室内静物の場合も、みんなで集まってやる場合は、やはり写真撮影をして、残りは家で見ながら描くことになるだろう。
 カメラのくせの関係で撮った写真はゆがんでいるので、写真を見ながら描く場合の注意点が二つある。 もっと詳しい説明は、将来上級編で説明するつもりである。
  1. 遠近感が違う。 風景撮影の場合、写真は遠近感が弱くなっていることが多い。 言い換えれば、遠くが大きめに写っている。 室内撮影の場合は逆に写真では手前が大きく写りすぎていることが多い。 言い換えれば遠近感が肉眼より強くなっている。
     ただし、標準レンズ=35mmフィルム換算50mm でかつスケッチした場所から撮影すれば、ほぼ肉眼と同じ遠近感が得られる。 この場合はスケッチ対象物の周りに余分なものが撮影されるが、それはパソコンのトリミングを用いて削ればよい。
     この例として、建物撮影をやってみた。 つぎの図2-3-1-1から3に撮影結果を示す。

    (絵をクリックすると拡大します) 
      
    図2-3-1-1 望遠レンズ 
    ぺったりした感じ
      
    図2-3-1-2 標準レンズ 
    ほぼ人間の遠近感
      
    図2-3-1-3 広角レンズ 
    遠近が強調されすぎ
     
     肉眼では人間の遠近感は真ん中の図2-3-1-2のようになる。 この遠近感でスケッチして家に持ち帰る。 これを自動ズームカメラで遠くを撮ると、左の図2-3-1-1のように、のっぺりした、遠近感が人間より弱い写真になる。 遠近感は、手前の木や白い柱状の縦棒と、遠くの芝生あたりの緑との比で比べると分かりやすいかも知れない。
     一方、スマホあたりで撮ると、右の図2-3-1-3のように撮れるだろう。 これは広角レンズを使ったためであり、広い画面が得られる代わりに、遠近感が強調されすぎる嫌いがある。

  2. 形がゆがんでいる。 風景撮影の場合は鼓(つづみ)型(糸巻き型とも言う)に、室内撮影の場合は樽(たる)型に、撮った写真がゆがんでいることが多い。
     ただし、ある程度高級なカメラ(高級コンデジ以上)を買えば、ゆがみが気にならない程度に自動ゆがみ補正をしてくれることが期待できる。
     鼓(つづみ)型湾曲の例を図2-3-3に、それをカメラで自動ゆがみ補正したものを図2-3-4に示す。 図2-3-3の上下左右の端に注目すると、真ん中が内側にへっこんでいるのがお分かりいただけるだろうか。 よく分からないときは、絵をクリックしてみると、分かりやすいと思う。

    (絵をクリックすると拡大します) 
      
    図2-3-3 鼓(つづみ)形彎曲の例
    (上下左右の端に注目)
      
    図2-3-4 自動ゆがみ補正後
     
     
     カメラの世界では、自動ゆがみ補正、グレーポイント法を用いた自動色調整などを用いると、現実の形と色に近づけることが可能である。 次の絵はそれらを施している。
    (絵をクリックすると拡大します)
      
    図2-3-5 ピクニック・春(F8)
      └→詳しく見る
・関連記事
 ├4.2. 人物画はモデルから離れてスケッチしよう
 ├デジタル一眼レフカメラの基礎知識−遠近感(パースペクティブ)
 ├歪んで見える歪曲収差(ディストーション)
 └写真が膨らんだように写ってしまうワケ(樽型歪曲収差)

(2016/8/7文章推敲) (2016/8/6追記) (2016/8/1追記) (2014/3/26改訂) (2014/2/8追記) (2012/12/7記) 


2.4. 筆は慎重に選ぶべし[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 筆は作家と絵を結ぶ大切な部分。 水彩の場合、筆に水をつけて紙におろしたとき、あげてみて曲がったままのものは落第。 すっとまっすぐに戻るものが良い。
もう一つ。 水彩下塗り工程では水を沢山含ませられるものが良い。
 
 使ってみた感じは、次のようであった。
水彩筆 筆の戻り 水含み 
良い筆
市販の水彩用筆
動物筆
ナイロン筆 ×
習字筆
平筆 ×
悪い筆 ×

 市販の水彩用筆はおおむね「良い筆」であるが、ブランドによってあたりはずれがある。 動物(テンなど)筆は高級筆である。 市販の水彩用筆とそう変わりはないが、あたりはずれがない。 ナイロン筆は大変安価である。 やや腰が強すぎる感があるがあるが、下塗り工程をすぎれば利用できる。 習字筆はやや腰が弱い感があるが、水含みが大変良く下塗り工程では良いかも知れない。
 平筆はプロに愛好家が多いが、下塗り工程では水持ちが悪く、初心者には使いこなせない。 ところが彩色工程に入ると、平筆は図2-4-1の背景上半分のような独特のタッチを表現できる。 これがあるので、プロに好まれるのではないか。

(絵をクリックして拡大すると、平筆独特のタッチが見えるようになります)
  
図2-4-1 秋の野菜たち(F8)
  └→詳しく見る

 つぎに良い筆、悪い筆の例を写真で示す。 左が描いている途中、右が筆を上げたときの状態である。

良い筆 
  
途中
  
引き上げてみたら
 
悪い筆 
  
途中
  
引き上げてみたら
   
・関連記事
 ├2.6. 下塗りは一番薄いところから
 ├2.7. 彩色は白色、黒色を使わない
 ├3.5. パレットよりもヨーグルトの外ぶた
 └3.6. だんだん筆が太くなってゆく

(2016/6/22変更) (2014/4/14追記) (2014/2/8追記) (2013/2/11記) 


2.5. 水彩は下描きが基本[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 下描きは彩色の前に、鉛筆などで形を線描で描く作業である。 水彩の場合は下地は紙の色なので、油絵のように下地作りはやらないことが多い。 ということでいきなり下描き工程に取りかかる。 この工程は大きく分けてトリミングラフ下描き詳細下描きと作業が進む。 油絵はラフに線描してすぐに次の工程に取りかかるが、水彩は先に塗ったものが、のちのちでもみえてしまう。 そこで、詳細まで線描を行い、次の下塗り工程へ移る。 水彩はこの工程で構図が完全に決まってしまうため、この工程をマスターすることが基本となる。

 絵を描く対象として何を選ぶかは個人の好みであるが、仮に次の風景が目にとまり、水彩で描くことにして、下描き作業手順を具体的な例で示そう。 なおこの風景は竹取物語で有名な、その昔竹取の翁が住んでいたとされる竹取公園である。
  
図2-5-1 竹取公園の風景
 
 まずは公園風景中どこの部分を切り取って描くか(トリミング)を決める必要がある。 熟考の末、トリミングしてつぎの部分を絵にすることとした。
  
図2-5-2 トリミング
 
 切り抜いた部分だけを表示すると、次のようになる。
  
図2-5-3 切り抜き後
 
 いよいよラフ下描きにとりかかる。 まずは、とりわけ心引かれるものをにしつつ、大きな物の配置を大まかにB4ぐらいの鉛筆で描いて行く。 大きさと位置のバランスを整えるためであり、この時点では細かく中身を描き込まない。 なれないうちは大きさと位置を掴みにくいので、初めのうちは、はがきとか4号までぐらいの小さな画板を使うと描きやすい。 まず構図を決めるのは、自分の描きたい世界をつくることで、大切である。
  
図2-5-4 ラフ下描き
 
 図2-5-4で一応ラフ下描きが出来たと思って、
画板から少し離れて見ると、水車小屋がゆがんで上が大きく描かれている、また、真ん中の生け垣があると遠近感が得にくいということが感じられた。 生け垣を削除してみると、今度はその後ろが横の線であり、全体として斜めの線が弱い感じがした。 そこで、川岸を斜めに変更してみたら、遠近感が強調された。 水車小屋は藁葺き屋根に変えた。 これで大まかな構図ができあがった。
  
図2-5-5 大まかな構図完成
 
 最後に詳細下描きにとりかかる。 油絵であれば画板の上で、ああでもないこうでもないと試行錯誤で、色を塗りながら構図を決めて行くことが可能である。 が、水彩の場合、先に塗った色がいつまでも表に見えるため、詳細な構図はここで決めてしまうことが基本となる。
 対象物を正確に写し取る必要はないが、風景画では家、室内画では人物は「それらしく見える」ように正確に描写すると良い。 これらは普段人の目に触れる機会が多いため、ちょっとしたことが「不自然」と感じられる。
(絵をクリックすると拡大します)
  
図2-5-6 竹取公園の夢(スケッチ)

これで詳細下描きは完成した。 あとは、
色を塗る作業になる。

 おまけであるが、彩色が終わり完成したものをつぎに見せる。 彩色してみると、空が少し多すぎる気がしたので、山を加えた。 また、水車小屋の左側空間が寂しかったので、母牛と仔牛を加えて、空間を賑やかにしてみた。
(絵をクリックすると拡大します)
  
図2-5-7 竹取公園の夢(彩色後)
  └→詳しく見る


下描き作業のQ/Aを下に列挙する。
・関連記事
 ├2.3. カメラはゆがんでいる
 ├2.6. 下塗りは一番薄いところから
 ├3.2. 絵は離れて描け
 ├3.3. 風景の構図は近景、中景、遠景
 ├3.4. 室内の構図は実物大で
 ├4.1. 良い絵は遠くから光っている。ほかの絵とちがう
 ├4.2. 人物画はモデルから離れてスケッチしよう
 └4.3. 手早く絵を仕上げ、かつ上手く見せるこつがある

(2017/2/1追記) (2016/6/22変更) (2014/2/8追記) (2013/6/16追記) (2013/6/15追記) (2013/4/30改訂) (2013/4/13記) 


2.6. 下塗りは一番薄いところから[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 水彩絵の具は、「下地が、さらにその上に塗った絵の具が、」最後まで透けて見えるため、それを生かした作業手順となる。 すなわち、大まかな配色を絵全体で確かめながら、次第に濃い色、暗い色を上塗りして、完成して行くことになる。 その第一歩が、下描きされた絵の、パーツパーツ(たとえば、葉っぱ、花、ビンぐらいの単位)で、その中で一番明るい色薄い色を、パーツごとにに塗って行く下塗り工程である。

 次の絵を水彩で描くことにして、下塗り作業手順を具体的な例で示そう。 
  
図2-6-1 これから描く対象
 
 ここではビン、花、バナナ、カボチャ、ニンジンぐらいのパーツで、各パーツの中で一番薄い色を大まかに塗っている。 その色が次工程である彩色時は、パーツの中で一番明るい色となる訳である。
 なお前工程である下描きでは、シクラメンの花を強調して2割大きく描き、ビンは構図の安定のためにやや後ろにずらしてある。
  
図2-6-2 下塗り開始
 
 どんどん、大まかに塗って行くと、背景も含め一応全パーツ「一番薄い色で」塗り終わる。
  
図2-6-3 一番薄い色で塗り終わる。
 
 ところが、周りを塗って行くとどうも薄すぎると感じるパーツが出てくる。 上の絵で言うと、ビン、花、バナナ、カボチャが薄すぎるようである。 周りに色がつくと、全体のバランスが崩れてしまうのが原因である。 そこで、もう一度、こんどは絵の具に混ぜる水を少し減らして、同じ色を塗り重ねると、しだいに濃くなって行く。 つぎの絵が完成した下塗りである。
  
図2-6-4 下塗り終了
 
 この工程では細部にこだわるよりも、色を含めた構図のバランスを「全部のパーツに色を塗ることにより」確認するほうが重要である。
 
下塗り作業のQ/Aを下に列挙する。
・関連記事
 ├2.1. 赤系の絵の具を買い足そう
 ├2.2. 紫系の絵の具も買い足そう
 ├2.7. 彩色は白色、黒色を使わない
 ├3.2. 絵は離れて描け
 ├3.5. パレットよりもヨーグルトの外ぶた
 └4.3. 手早く絵を仕上げ、かつ上手く見せるこつがある

(2017/2/10追記) (2014/2/8追記) (2013/2/22記) 


2.7. 彩色は白色、黒色を使わない[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 前節で下塗りされた絵をいよいよ、少なくとも20分できれば二日ほど養生してから彩色する。 水彩絵の具は、「下地が、さらにその上に塗った絵の具が、」最後まで透けて見えるため、それを生かした作業手順となる。 すなわち、大まかな配色を絵全体で確かめながら、次第に濃い色、暗い色を上塗りして、完成して行くことになる。 すでに各パーツ中の一番薄いところは下塗りされているので、濃い部分を上から塗り重ねることになる。

 彩色のときに、注意点が二つある。 
  1. 下地の白をなるべく生かす。 色を薄めるために白い絵の具を加えると、薄くなるならずに色が濁るだけではなく色が浮いてくる。
    そこで、既に下塗りで他の色が塗られている場合は、
    • 白い絵の具を加えて明るくするのではなく、色を水で薄めて(下地の白と合わせることにより)明るいという表現をする。
    • 下塗りが濃すぎたので明るくしたいのであれば、後述Q/Aで述べる方法で色抜きをする。
    • 不透明にもなるが自分の出したい色に必要なら、適度を考えて使えば良い。 たとえば肌のように不透明感を与えたい場合は、必要に応じて白を使う。
    白単独で使う場合は、
    • 局所的に明るいという表現をしたい場合は、下塗りを二日間ほど乾かしてから、水を混ぜずに白を使う。 そうすると下塗りと混じらず透明感を保ったまま、ほぼ白になる。
    • 純白を得たい場合には、下地を塗り残して白の表現をする。 塗り残しはにはアラビアゴムを使うなどの方法がある。
    • 不透明感を与えたい場合は、白を水と混ぜ、下地に塗り重ねる方法もある。
  2. 黒は強いので、基本的に使わない。 黒を使いたい場合は、赤青黄三原色を混ぜて代わりに使うと、上品な感じになる。 わざと汚くする場合と、単独で強烈な印象を与えたい場合は小さい範囲で例外的に使う。

 では前節下塗り工程の続きで彩色作業手順を具体的な例で示そう。
次の絵では、ニンジン、カボチャ、バナナは数回濃い色を、色を変えながら重ねている。 葉っぱは、下塗りから一回塗り重ねた状態である。 彩色工程では絵の具は水を少なく使って濃いめに使う。 それを塗り重ねて行く。 塗るごとに養生して乾かしてからまた塗ると、透明水彩特有のうるしのような深み(すかし効果)が出てくる。
  
図2-7-1 すかし効果を狙う。
 
 養生して乾かすと、違う色を塗り重ねることが出来る。 たとえば少し黄色みがたりないと思えば、原色の黄色を上に塗ることにより、黄色みを増やすことが出来る。 次の絵で四角で囲んだところ(緑、黄、青の四カ所)は、いずれも絵の具の色をそのまま塗り重ねているが、二三日おくとこのように先に塗っておいた色となじんでくる。 葉っぱを塗ることにより、バナナが弱くなってきたので少し濃くしておいた。
  
図2-7-2 原色を塗ってみる。
 
 影をつけ、背景や机を塗り重ねた。 そうすると、ニンジン、バナナ、ビンが弱く思えてきたので、さらに濃くしていった。 花、葉っぱには手を加えていないが、背景を工夫することにより、より生き生きと見せることが出来る。 これで完成した。
  
図2-7-3 背景を工夫し完成
 
 最後にガクブチで飾ることにより、馬子にも衣装、よりよく見せることが出来る。
(絵をクリックすると拡大します)
  
図2-7-4 シクラメン・冬(F8)
  └→詳しく見る

彩色作業のQ/Aを下に列挙する。
(2017/2/15追記) (2016/6/22変更) (2014/8/16追記) (2014/2/8追記) (2013/3/12改訂) (2013/3/10改訂) (2013/3/9改訂) (2013/3/2記) 


2.8. スケッチとは観察すること[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 スケッチすると、先輩方は速いしうまい。 それに比べ自分は何を描いたらよいのやらに始まり、どう描いたら良いのか、初心者は分からなく途方に暮れるのではないだろうか。 何を描いたら(対象物)は、とりあえず先生にお願いすることにして、どう描いたらよいのかについてのポイントをつぎに述べる。
 大事なのは、手早く手を動かし線を引くことではない。 大事なのは対象物をじっくり観察することである。 観察になれてないので、先輩方よりスケッチに時間がかかるのだ。 観察は限られた時間でやるので、観察のポイントがある。
 ここで話の前提として、カメラで撮影をして、スケッチの続き、色塗りは家に持ち帰りやるということにする。 というのも、スケッチの本来の姿はその場の空気感観察なので、全部現場で終えるのが理想である。 が入門編=この節の読者はとても先輩方のまねは出来なくて、家に持ち帰って写真を見ながら宿題をこなすことになるだろうからである。

 まず風景画から述べる。 
  1. 特に大事な点として、人間が見慣れているもの(特に家)については、形のゆがみ、大きさの違いがあると、観る人に違和感が残る。 そうするとへたな絵と見られてしまう。 家については重点的に観察し、描いておく。
  2. 暗い部分が写真ではつぶれてしまうので、その部分の状況を重点的に観察し覚えて持ち帰る。
  3. 意識せず撮影すると、遠近感が写真と人間の目では異なるので、意識して遠近感を人間と同じにして撮影しておくか、物と物との比率を重点的にスケッチで描き留めておく。
  4. その場の雰囲気、季節感が出ている物がないか、朝とか晩とかの時間を表す物はないか、捜してみて、あればそれを重点的にスケッチする。 季節の花、陰の具合、光線の当たり方などがその例である。
  5. 木の葉っぱの色、枝の付き方、木の色は、木の種類によって千差万別である。 2.9. 自然界には絵の具そのままの色はないので、よく観察しよう。
  6. お寺・神社の屋根は、良く観察してみると三次元でカーブを描いている。 これは美しいものであるが、描くのが大変難しい。 よく観察してスケッチしよう。
    (絵をクリックすると拡大します)
      
    図2-8-1 長久寺の秋(F6)
      └→詳しく見る
  7. プロいわく、物の配置は全部覚えて持ち帰る。 それぐらい、プロは対象物を観察している。
 つぎに室内画(除く人物画)について述べる。
室内にある物は人間がある程度見慣れているので、風景画に比べて初心者には少し難しい面がある。 
  1. 室内画では複数の物を画面に収めるが、特に物の前後関係に違いがあると、観る人の違和感となる。 物の前後関係を頭に入れながらスケッチすると良いだろう。
  2. 陰を描き込むと立体感、現実感が出てくるので、陰を重点的に観察する。 できれば一方向から光を当てると描きやすい。
  3. 風景画と同じく、形のゆがみ、大きさも注意したい。 カメラの遠近感も同じ注意が必要。
 最後に人物画について述べる。
人間は特に顔は、少しの違いを認識できるので、室内画、風景画に比べて格段に難しい。 
  1. 人物画では各部品間の形のバランスが少し異なるだけで違和感となるので、ここを十分に観察する。
  2. 加えて上の、室内画の注意点は人物画にも同様に当てはまる。
  3. なお上級編であるが、4.2. 人物画はモデルから離れてスケッチしようも参考になろう。

(2016/6/22変更) (2013/6/5追記) (2013/4/22記) 


2.9. 自然界には絵の具そのままの色はない[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 さてスケッチをしようと出かけ、よくよく観てみると、絵の具と現実の色があまりに違うことに気がつき、愕然とする。 家などの人工物はともかくも、風景の中の葉っぱの色、空の色・・・は、絵の具とあまりに違いすぎる。 葉っぱにいたっては、木や草の種類ごとに、さらに若い新芽、光の当たりぐあい、などなどで、微妙に色合いが異なることに気がついてしまうと、気が狂いそうになる。 絵の具はそのままでは生々しすぎで、自然界はもっと地味なのも気になる。
  
図2-9-1 葉っぱの色は多彩かつ地味
 

 2.9.1 混色の方法

 自然界に近い、あるいは観るものに違和感のない表現をしようと思うと、「複数の絵の具を組み合わせて、表現したいある色を実現」=混色することになる。 混色に利用される方法の内、代表的な物を次に挙げてみよう。
方法 特徴 用途
1: 絵の具をあらかじめ混ぜておいてから、画板に塗る。 広い面積を同じ色で塗るのに向いている。 下塗り工程やたとえば一面真っ青な空など
2: 画板上で、重ね塗りする。 微妙な色調の違いや、深みのある表現が出来る。 彩色工程で方法1:と組み合わせて使用
3: 点描で描く。 すなわち観る人の目で混色させる。 濁りの少ない、きれいな色表現が出来る。 一部の印象派の絵がこの描き方
4: 線描で描く。 すなわち観る人の目で混色させる。 濁りが少なく、かつ力強い表現が出来る。 ゴッホの絵がこの描き方

 2.9.2 風景画の表現

 どの色とどれを混ぜるとこういう色が出るということは、経験を積んで体得していく以外にない。 といってしまえば、入門編=この節の読者からみて身もふたもないので、風景画で重宝する二つの混色について紹介しよう。
目標とする表現 混ぜ方 実施例
(絵をクリックすると拡大します)
湿気の多い日本の空 mineral violet少し、blue gray多く、
horizon blue多く。 
湿気表現は白多く、黒少しで
灰色作り混ぜて加減する。
  
背景が法隆寺の空
奈良の女(ひと)(F10)
  └→詳しく見る

  
水彩用紙の地色を利用して、
薄雲の表現も出来る。
千早赤阪村下赤坂(F8)
  └→詳しく見る
木の葉 緑色をあまり使わないほうがよい。 
青系統の色に黄土から茶系、
暗い場合はこげ茶系などを混ぜると
よほどリアリティーが出てくる。
  
黄土色で下塗りし、青系、茶系を
重ね塗りした。
つつじの鳥見山公園(F8)
  └→詳しく見る

 2.9.3 肌色の表現

 更に、人物を描くには肌色で苦労すると思うが、肌色のうまい表現の仕方を二人の先生方から教えていただいたので、紹介しよう。

 [奈良市島田邦麿先生]曰く、透明水彩で日本人の肌の表現をするには、 を使用すると、上手く表現できる。
 この話を補足する。 水彩画の場合は、基本専用の、やや黄色がかった紙に描くので、バーミリオンを薄く伸ばしたやや桃色と、後ろの紙の黄色が混じり合って、やや健康的な肌色となる。 人によっては黄色がかった肌もあるので、人により加減する。
 さらに補足すると、これだけだと日焼けとか、暗いところの表現が出来ない。 筆者は、 を加えて使っている。
 そうすると具体的には下の絵のような肌の表現となる。

(絵をクリックすると拡大します)
  
図2-9-2 スイスの、あかりん
  └→詳しく見る

 [武蔵村山市O先生]曰く、すべての肌は次の5色で表現できる。  この話を補足する。 油絵の場合、背景が黄色がかった白とは決まっていないので、不透明なしろが登場する。 バーミリオンの代わりにカドニウムレッド ライト、ネイプルス イエローの代わりにイエローオーカーとなっているのは、水彩紙の黄色を補う役目をしているのではないか。
なお、カドニウム系の絵の具は有毒性なので、長期間手につけておくとかはしないように注意が必要と思う。


 どう混色するかは、自己表現の手段であるから、自分色を自分で捜すことになる。 実際の色を自分色に変えて描く場合もある。 ともあれ混色は経験を重ねてゆっくり体得していけばよいし、そこに表現の面白さがある。
上級者向けには4.5. たかが色、されど色々を用意したので、興味があればそちらもご覧あれ。


(2018/6/25推敲) (2017/2/25追記) (2017/2/9追記) (2016/11/23追記) (2016/8/18変更) (2016/6/22変更) (2014/8/16追記) (2013/5/19記) 

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