使ってみて役に立った、画家達の名言集/p4

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水彩画ネットワーク 退職後水彩画を描き始めた人へ

4. 上級編(6年ぐらいたって、なれた頃に効く名言)


4.1. 良い絵は遠くから光っている。ほかの絵とちがう[奈良市四季彩会S会長]

 
 <解釈>
 光るには、まず目に止まる、つぎに構図がよいか配色がよいと感じさせることであると考える。 広告で意味もないのに美女の顔を出して、その力で広告を読ませようと言うのと同じ作戦である。
 目に止まるには美女の顔を出すほかに、明暗や強弱を工夫するなどの手がある。 目にとまる力をフラクタル次元を利用して、注目度数という形で定量化も試みられている。 一方、構図とか配色を定量的に評価する方法は、筆者は知らない。 ご存じの方は教えていただきたい。 そこで、この節の以下の議論では注目度数についてのみ述べることとする。

 つぎのグラフは、世界で最も高価に売買された絵画の上位5位までの注目度数を距離別に示したものである。 なお、第一位のJackson Pollockの「No. 5, 1948」の高解像度写真が見あたらないので、代わりに彼の同じ作風の代表作である「Blue Poles:Number 11,1952 」を使用する。 ここで各絵画に共通しているのは、ある距離にピークを持つ、凸型曲線を取ることである。 言い換えれば、遠くで注目度数が高い。 
  
図4-1-1 上位5位までの注目度数
 
 一方、スナップ写真とか筆者の描いた絵(「小辺路の春」)では、遠くでは注目度数が低く、近づいてやっと注目される。 言い換えれば、遠くではほとんど注目されない。
  
図4-1-2 スナップ写真と筆者絵の注目度数
 

 上のグラフを眺めていると、色々な解釈が可能であろう。 たとえば、 ここで、グラフを見るに際して注意することが一点ある。 注目度数の絶対値に意味はないため、絵と他の絵の比較はできない。 注目度数が高いことが、良い絵であるという話にはならない。 あくまでも、ある絵がどの距離で一番注目されるのかを表すものである。 
・注
[注1]: 第一位のJackson Pollockの「No. 5, 1948」の高解像度写真が見あたらないので、代わりに彼の同じ作風の代表作である「Blue Poles:Number 11,1952 」をここでは使用する。

・関連記事
 ├世界で最も高価に売買された絵画
 ├1.2. 絵画の鑑賞は、対角線の二倍
 ├1.3. 絵画は遠くにありて眺めるもの、写真は近くにおいて見るもの
 └3.2. 絵は離れて描け

(2017/3/26追記) (2014/2/8追記) (2014/2/8変更) (2013/1/5追記) (2012/08/6記) 


4.2. 人物画はモデルから離れてスケッチしよう[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 室内画の中でも、モデルを使った人物画を描くときには特別な注意点がある。 モデルさんから1.5m離れてスケッチすると、人間の目には下左の写真(1)のように見える。 それを忠実にスケッチすると、先生から「腰が細い、足が細い」と注意される。 生徒は「見たまま描いたのに」と不満が残る。

 そのすれ違いは、先生は頭の中にある人物像、すなわち遠くから観たモデル像を思い浮かべるのに対し、生徒は目の前の現実の人物をスケッチすればよいと思うことから起こる。 言い換えれば、先生は下右写真(2)のように描きなさいと言うのに対し、生徒は下左写真(1)が現実に忠実ではないかと思うことに起因して、すれ違っている。

(クリックすると拡大します)
  
(1)1.5m離れてスケッチ
  
(2)遠く離れてスケッチ
 
 鑑賞者は必ず1.5m離れて観るわけではなく、遠くからやってきて見始める。 すなわち先生は鑑賞者の立ち位置が遠くの場合に自然に見えるようにという、指摘である。
 それでは、先生がこうスケッチしてほしいという理想の姿に、写真を加工してみよう。 左写真(1)はモデルから1.5mはなれて、目の位置にカメラを置いて撮影したものである。 一方右写真(2)は左写真を加工したもので、10号で説明すると、腰回りが2cm広がり、座高が3cm高くなっている。 言い換えると腰回りが豊かになり、背も高くなっている。 この数値は、背景壁の縦の筋を垂直に加工し、そのとき2cm広がったので、比例配分して縦に5%延ばしたことが根拠になっている。

・関連記事
 ├1.2. 絵画の鑑賞は、対角線の二倍
 ├1.3. 絵画は遠くにありて眺めるもの、写真は近くにおいて見るもの
 ├3.2. 絵は離れて描け
 ├3.3. 風景の構図は近景、中景、遠景
 └3.4. 室内の構図は実物大で

(2016/7/13訂正) (2014/2/8追記) (2013/1/27記) 


4.3. 手早く絵を仕上げ、かつ上手く見せるこつがある[奈良市島田邦麿先生]


 <名言の詳細>
 旅などで手早く絵を仕上げたい時があります。 素早くかつ上手に見える描き方を伝授しましょう。

 まず概略の作業手順を述べます。
 スケッチブックは4号位、大体の構図はおおまかに薄く決めて後は一発勝負、細書きか中細サインペン、こる人はたけペンか箸のけずったもので下絵をかき、思い切って感覚的に色をおいていきます。 軽やかで、すばやい筆のタッチが大切、余白を残す場合もあります。
 さらに、屋外でのスケッチの場合は、固まったパレット絵の具セット(絵の具は2重になっています)と、水入れは折りたたみのものか,茶缶のふたのようなものを用意します。

 つぎに描き方のポイントを述べます。
  1. 先ず描きたいものがひらめくことですが、ひらめかなくても興味ある対象があることです。
  2. 非常に大まかな構図を、すばやく薄い鉛筆で決めます。
  3. できたらサインペンや油性の筆で、よく見ながら思い切って描きます。 正確さが問題ではなく、把握力の、全体のバランスの問題です。
  4. つぎに絵の具を使い、思い切って筆を運びます。
  5. 筆はやわらかめ、水を多めに使い、濃くしたいところは少し筆を押す、つまり濃淡をつけます。
  6. 要点から次第に周りに筆を広げてゆきます。
  7. 一筆勝負のつもりで。色のハーモニー、明暗、要点のでき、バルール、などを考えて仕上げに持ってゆきます。
  8. なお、余白を計算してむしろ残すべきは残します。
やはり3,4,5が大切でしょうか。
大切なことは、感性を澄ますこと、そして決断です。 しかしそれには大事な下地がいるのですが、時にはだれもがやってもいいことなのです。 すばやい把握と瞬時の感性が養えます。

 <解釈>
 すばやい把握と瞬時の感性にはほどとおい、退職後水彩画を始めた不肖の弟子が、実際にやってみた。

 2013/07/11にまず、軽井沢18号線沿い湯川のたもとから、浅間山がこの時期にしては珍しく顔を出したので、雲で隠れてしまわぬうちにスケッチしてみよう。↓
  
図4-3-1 スケッチ対象(湯川のたもとから、浅間山)
 
 スケッチブックはあいにく8号しか持っていなかったので、4号はこれぐらいかと枠を作って、その中で描いてみたが、後で測ってみたら5号程度であった。 教えの4号位より大きめである。 一筆勝負にするために、2時間で描き上げることにして背水の陣で作業開始。 まずは薄い鉛筆での構図決めである。 いつもの水彩画は4Bを使うが、今日は2Bの鉛筆を用いてみた。↓
  
図4-3-2 薄い鉛筆での大まかな構図決め
 
 スケッチペンを用いて、線を確定しながら詳細化してゆく。 構図はこの段階で確定してしまう。 この段階で1時間経過。↓
  
図4-3-3 線を確定しながら詳細化
 
 あと残り1時間である。 いよいよ絵の具を使い、色を塗ってゆく。 筆は習字用の筆を使った。 いつもの水彩用筆より太く腰が弱く、かつ水の含みがよい。 外ではパレットが小さく水入れが一つしかないので、一色ずつスケッチブックの上で重ねて行く感じになる。 不便である。 まず橋を中心にしてその回りから描き始めて、だんだん広げていった。 手前の処理など、描き足りない感じを残しながら、時間切れで終了した。↓
(絵をクリックすると拡大します)
  
図4-3-4 浅間山(2時間スケッチ)(F5)

上手く見せられたかどうかは不明であるが、なんとか雲で浅間山が隠れる前に完了した。

 この絵に関して島田先生から次の言葉をいただいた。
「参考作品からー構図はうまくいっていますが、塗りがやはり単調です。色の濃淡と塗り方が丁寧すぎるのかな。 速描きの場合はタッチの大きさや方向、濃淡が絵を生き生きさせます。ま試みの段階だから、色々試みてみてください。」
 上のコメントを頭に入れて、2013/08/24に毎年東御市芸術むら公園で行われているスケッチ大会で、筆のタッチ、色の濃淡と塗り方に気をつけて、南米のネズミであるマーラを描いてみた。 主に平筆を使うことにより塗りを倹約し、1時間で仕上げた。↓
(絵をクリックすると拡大します)
  
図4-3-5 マーラ(1時間スケッチ)(5号)
  └→詳しく見る

この絵に関して会場の講師から次の言葉をいただいた。
「あとは、スケッチペンの使い方にリズム感を持たせると、さらによく見えるでしょう。」

・関連記事
 └2.4. 筆は慎重に選ぶべし

(2017/4/11追記) (2016/6/22変更) (2014/2/8追記) (2013/8/25追記) (2013/7/29記) 


4.4. よい額は、自分に合った服のようなもの[奈良市島田邦麿先生]

 
 <解釈>
 自分に合った服装を見つけてきたとき、あなたはフィットした自分に満足するはずである。 絵も同じように、それにフィットした額に入れると、絵がぐんとよく見えるはずである。
 言い換えれば、絵と額が別物になってはいけない。 一体となって絵を引き立てるには、絵の中の色と額の色に何らかのつながりも必要である。 同系色ないしはたがいに響きあう関係の色が絵の中にあって、はじめて関係を持ちながらも絵を最大限生かす、ということになる。 マットも同じことが言える。 あまり難しく考えずにそのフィーリングを大切に養ってゆけば良い。

 良い額とマットを選ぶには、つぎの順序がお勧めである。 なお水彩では、額の幅は油絵と違って細身が普通である。

水彩画の場合で、絵にあった額と合わない額の例を紹介しよう。↓
(絵をクリックすると拡大します)
 
歌姫の道
  
図4-4-2 合わない額

 なお、風景画の額とマットの色の組み合わせについては、ある場合には定番とも言えるものが存在するので、紹介する。 ある場合とは、日本に多い、緑と茶を基調とした風景についてである。 
 この場合、マットは薄めのベージュが定番である。 これには、額は少し地味な茶か緑系統が合う。 例を示すと、つぎの図4-4-3に緑系統の額とベージュ・マット、図4-4-4に同じ絵で額を茶系統に置き換えた物を紹介する。 この絵の場合、額はどちらを選択しても良いが、強いて言えば、春夏秋に出品するなら緑、冬の作品展へ出品するなら茶系統、と言ったくくりかも知れない。
 ここで説明した定番とは異なるが、この絵では空の紫がかったところを生かしたマットにしたいとか、ベテランになると別の解き方もあると思う。 自分のフィーリングで決めれば良い。
(絵をクリックすると拡大します)
 
奈良公園の春
  
図4-4-4 茶額にベージュ・マット

(2017/4/17変更) (2016/6/22変更) (2014/11/14追記) (2014/10/21改訂) (2013/11/26記) 


4.5. たかが色、されど色々[筆者]

 ├ 4.5.1 人間の色認識の特性
 ├ 4.5.2 絵の具の特性
 └ 4.5.3 人間の特性、絵の具の特性を踏まえた、混色のこつ

 <解釈>
 市販されている絵の具はたかだか3桁の数であるが、画家の表現したい色はその中に含まれていることはまれである。 さらに上級者になるにつれ、緑を中心として、自然界の色に比べて絵の具の色は生々しすぎ、不自然に思えてくる。
 そこで混色して、目的の色を作る訳である。 ここでは、4.5.1で人間の色認識の特性4.5.2で絵の具の特性を、画家向けになるべく平易に紹介する。 最後に4.5.3で人間の特性、絵の具の特性を踏まえた、混色のこつについて紹介する。 画家向けに平易にするために、説明が専門家から見ればやや荒いところがあるが、ご容赦いただきたい。

 4.5.1 人間の色認識の特性

 一般的に紫・藍・青・緑・黄・橙・赤の7色が虹の配色であるが、それぞれ光の特定の波長のものを表している。 人間はこれだけの色を認識でき、それらは可視光線と呼ばれている。

引用: 表4-5-1 可視光線波長は目安で、決まっているわけではありません。 1nm = 1ナノメートル = 10-9 m
波長 (nm)380〜430430〜460460〜500500〜570570〜590590〜610610〜780
色 相

 虹はある色から他の色連続して移り変わるため、実際には自然界には無限の色がある。

  
引用: 図4-5-1 虹の色(上の表とは左右が逆に表現されている)

 虹は7色であるが、人間の色認識を司る目の錐体細胞はわずか三種類しかない。 wikipediaによれば
 人間の網膜には長波長(黄色周辺)に反応する赤錐体(L)、中波長(黄緑周辺)に反応する緑錐体(M)、短波長(青周辺)に反応する青錐体(S)の三種類があり、それぞれの錐体細胞は特定の範囲の波長に最も反応するタンパク質(オプシンタンパク質)を含む。これらが可視光線を受け、信号が視神経を経由して大脳の視覚連合野に入り、ここで3種の錐体からの情報の相対比や位置を分析して色を知覚している。

  
引用: 図4-5-2 人間の錐体細胞 (S, M, L) と桿体細胞 (R)それぞれの反応スペクトル

 上の図を見ると、赤錐体(L)と緑錐体(M)の反応ピーク間隔が狭いのが目につく。 言い換えれば人間は、緑周辺から黄色・橙色にかけての色認識に優れている。 その昔、人類の祖先が木の上の緑の多い環境で生活していたころ、木の種類、熟した木の実を見分ける必要性があった名残であろう。
 目からはたった三種類の色信号が大脳へ来るだけである。 大脳が三種類の色信号を総合的に分析して7色を知覚している。 たとえば青錐体は、紫・藍・青を感知すると、それをすべてS信号として大脳へ報告する。 青錐体だけではSは紫なのか藍なのか、はたまた青なのかは分からない。 赤錐体は紫と藍、緑錐体は藍と青に反応するので、赤錐体、緑錐体の反応情報を見て、紫・藍・青の区別をする。 特に特徴的なのは紫で、青錐体反応、赤錐体反応、緑錐体反応せずであれば、大脳は紫と判断する。 したがって、青色と赤色を混ぜれば、大脳はまちがって紫と錯覚してしまう。
 錐体細胞から三種類の色信号が来たときの大脳の働きをまとめると、次の図のようになる。

  
 
引用: 図4-5-3 RGB色相環。赤・緑・青を等間隔に置く

 この図の見方を説明する。 青錐体のみからの信号が来たら「青」と大脳が認識する。 同様に赤錐体のみだと「赤」である。 青錐体からが強くて、赤錐体からの信号を少し混ぜると紫と認識する。 赤錐体からの信号をさらに増やすとピンク(正確にはマゼンタ)と認識する。
 

 4.5.2 絵の具の特性

 絵の具は色を混ぜると徐々に濁った色になる
 その原因は絵の具にある。 絵の具の色は下の図にあるとおり、単色ではないどころか、複雑怪奇である。

  
引用: 図4-5-4 絵の具のスペクトル(サクラマット水彩)
 
 たとえば上の図のやまぶきいろに注目すると、色相が緑・黄・橙・赤の成分を含んでいる。 これがやまぶきいろに見えている。 緑は緑錐体が反応し、黄・橙・赤は赤錐体が反応する。 緑成分がやや少なめなので、赤に近いやまぶきいろに見えるのであろう。 その隣の黄色であるレモンいろを見てみると、同じく色相が緑・黄・橙・赤の成分を含んでいるのみならず、青の成分も多少含んでいる。 緑成分がやまぶきいろに比べて多いので黄色に見えるのであろうが、それにしても多様な色を含んでいるのにきれいな色に見えるのに驚かされる。

  
引用: 図4-5-5 あいいろ・ビリジアン・あお・きみどり(サクラマット水彩)
 
上の図であおビリジアンに注目すると、たしかに青成分が多いが、緑成分もかなり多いのに注目していただきたい。

 赤と紫系絵の具の混色には特に注意が必要であるのでつぎに説明するが、それぞれ別の事情がある。
共通の事情としては、図4-5-2を見てほしいが、どちらも人間の錐体細胞には知覚されにくいということがある。 赤は黄色に比べて半分以下、紫も青に比べて半分程度しか知覚されない。 裏返して言うと、他の色があると、そちらの方に目がいってしまう。
 赤系絵の具の場合、赤系以外の絵の具と混ぜると、てきめんに色が濁る。 赤は緑錐体・青錐体からの反応が無く、赤錐体のみからの反応がある場合に、大脳が赤と認識する。 図4-5-4を見ると、やまぶきいろでさえ緑色を大量に含んでいるので、緑錐体が大きく反応する。 赤の他に緑、青錐体が反応すると大脳は灰色と認識してしまう。 これと先ほどの共通の事情が合わさって、てきめんに濁ることになる。
 紫系絵の具の場合、紫と赤系以外の絵の具と混ぜると、てきめんに色が濁る。 赤・青錐体からの反応があり、緑錐体からの反応がないということで紫と大脳は認識している。 したがって図4-5-2を見ていただきたいが、緑錐体の反応するような絵の具を使うと大脳は灰色と認識してしまう。 これと先ほどの共通の事情が合わさって、てきめんに濁ることになる。 緑錐体が反応するのは青・絵の具のあいいろ・緑・黄・橙系の絵の具、要するに紫と赤系以外の絵の具全部である。

 以上まとめると、絵の具はそれぞれが複数の色相を持っており、絵の具と絵の具が補完関係にあるわけでない。 これは絵の具が色彩理論が確立される前からあり、伝統的に自然界にあるきれいな色を集めた関係からかも知れない。 一方、たとえばプリンターのインクは色彩理論にしたがい、マゼンタ、シアン、イエローのわずか三色でほぼ完全に、可視光で見られる色々を表現できている。 これはそれぞれのインクがきれいに整理され補完関係にあることを示している。

 4.5.3 人間の特性、絵の具の特性を踏まえた、混色のこつ

  1. 風景画の場合は
     絵の具そのまま、あるいは二種類程度を混ぜたのでは、自然界の風景では「生々しすぎる」。 複数の色を混ぜると落ち着いた色になり自然な感じになる。 これは自然界は花以外はきれいな色が少なく、多数の色相が混じり合う複雑な世界であるからであろう。 また、絵の具を混ぜるのでなく、画板上で重ね塗りすると、さらに深みが出てくる。
     4.5.1節で示したように、人間がほんの少しの違いに敏感な色は、緑・黄・橙である(図4-5-2参照)。 木の葉やそれに実る果物など、風景で中心となることが多い色々である。 それらの色の自然さには注意を払いたい。
     この中で緑は、特に使用頻度が高い色である。 緑は絵の具の緑色を塗るのではなく、少なくとも青系統の色と、黄色系統(黄土から茶系、暗い場合はこげ茶系)などを混ぜるとよほどリアリティーが出てくる。 ここで赤系統の色をほんの少し混ぜると、さらに落ち着いた緑色が現れる。 筆者も入門の時、沢山の緑系統の絵の具を一式買いそろえた。 が、これから出発した緑色は、どうも生々しすぎて落ち着かず、結局今では緑系統の絵の具はお蔵入りとなっている。

    (絵をクリックすると拡大します)
      
    図4-5-6 藤の咲く頃(F8)
      └→詳しく見る

    上の絵では、緑は青系と黄土色・茶色系の絵の具を混色、塗り重ねして、自然な感じを狙っている。

  2. 花を描く場合は
     花は自然界では例外的に、きれいな色をしている。 絵もきれいに描きたい。
    いままで落ち着いた色にするには・・・という話ばかりしていたが、一転ここではきれいな色にするにはという話をしたい。
     きれいな色を出すには4.5.2節で示したように、なるべく色を混ぜないことである。 それには二つ方法が考えられる。
     まず、花の色である赤系紫系黄色系の絵の具を片っ端から買いそろえて置く。 混色はなるべく避け、絵の具の色をそのまま使いたい。 暗いところは絵の具を濃く塗ることで表現したい。 がどうしても混色したい場合は、赤は赤系の絵の具と、紫は紫・赤系の絵の具と一回だけにする。
     つぎに、混色はしないですませる方法がある。 絵の具原色を小さな点や細い線にして、直接画板に載せて行く。 すぐ隣に違う色を、やはり小さな点や細い線にして載せて行く。 けっして重ね塗りしない。 この方法は、プリンターやディスプレーでやられているものである。 画家でもゴッホや印象派の一部の画家がやっている。 絵全体のごく一部であれば、作業量もやれる程度では無かろうか。

    上の図4-5-6では、藤は絵の具を混ぜないで、傘、服などの人工物は一回混色にとどめて、きれいな色を表現している。

  3. 混色の感覚をやしないたい場合は
     混色の練習用に便利なツールがある。 絵の具の色の混ぜ合わせ(ネイルアートにも)である。 プリンターで使われている、色の三原色を使い、混色をするとどんな色ができあがるか、PC上でシミュレーションできるので感覚をやしないやすいのではないか。
     ただしこれは絵の具を使った混色ではなく、したがって色相の複雑さは表現できていないため、絵の具でやると実際にはこれで表されたものよりも濁った、落ち着いたものになる。
     実際に絵の具を使い混色を繰り返して行くと、だんだん感覚も出来て行く。 習うより慣れろである。

・関連記事
 ├引用: 虹の七色とスペクトル型
 ├引用: 虹の配色
 ├引用: 桿体細胞
 ├引用: 原色
 ├引用: 色相
 ├引用: 絵の具のスペクトル(サクラマット水彩)
 ├引用: 絵の具の色の混ぜ合わせ(ネイルアートにも)
 ├2.1. 赤系の絵の具を買い足そう
 ├2.2. 紫系の絵の具も買い足そう
 ├2.7. 彩色は白色、黒色を使わない
 └2.9. 自然界には絵の具そのままの色はない

(2017/4/18文章推敲) (2016/8/6文章推敲) (2016/6/22変更) (2014/8/16記) 

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