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佐藤和夫>読書> いずれの日か国に帰らん

 『ふしぎなえ』で著名な、水彩画、挿絵を描かれていた安野画伯が、最近亡くなられました。
そこで、絵とエッセイからなる、画伯の本を読んでみました。 主題の「国」とは、画伯の生まれ育った所である津和野のことです。

 絵は、裏日本にある小さな盆地の城下町、津和野町の風景です。
いずれも俯瞰図で、地味な色と細い線で構成されています。 絵にはこれと言った中心がなく、しいて言えば、虫眼鏡で主題を捜すという描き方です。
 エッセイは、津和野に住んでいたころに交わった人達との思い出が、一人一章という感じで構成されています。 また、小さな町にもかかわらず、明治維新後多くの学者、文化人を輩出しています。 これらの方々についても、思い出を述べています。
 最後の方は、弟さんとその関係者を巡る、交わりと、弟さんの描いた絵で締めくくられています。

感想

  1. 絵を観るにおそらく、まじめに生きた、繊細な方だと想像します。
  2. 画伯の卓越した才能は、絵の構成力にありと、読みました。
  3. エッセイでは、子どものころの出来事を、老後も覚えているのに驚嘆します。 その出来事を淡々とした筆致で書いています。 まるで、画伯の描く絵のようです。
  4. それにしても津和野町は、小さな街に沢山の、有名人を輩出したものです。 実に不思議です。 明治維新以降です。 何があったのでしょうか。
  5. 弟さんは76才で、随分前に亡くなられています。 この本のタイトルは、弟さんに手向けられたもののような気がしました。
  6. この本には関係ありませんが、推理小説の世界では、津和野は殺人事件の舞台として、随分人気があるようです。
 一度、画伯の愛した津和野に行きたいものです。 きっと、昔住んでいた奈良に似て、春秋の朝は、雲海の下だと想像します。

基本情報

 書名: いずれの日か国に帰らん
 著者: 安野光雅さん
 ISBN:  978-4-63-415130-7
 出版日: 2018-04-25
 出版社: 山川出版社
 読書日: 2021-02-07

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